ゼロエミッション宣言どう実現? 沖縄電力トップに直撃

 

カギは蓄電池による系統安定

―― 一方で、天候によって発電に波がある再エネの普及には、発電だけでなく、変電や送電、配電といった一連の電力系統の安定が欠かせません。

本永 おっしゃる通りです。再エネをどんどん増やしていくためには系統の安定は絶対に欠かせません。その技術の確立も再エネ導入拡大にあわせてやっていきたい。その一つが蓄電池の技術です。波照間島では風車にモーター発電機も加えて、島の中で100%電力を再エネで賄う取り組みを行っています。宮古島でもマイクログリッド(分散型電源で一定地域の電力を地産地消する小規模電力系統)の実証試験を行っています。いろんな島で制御技術の知見は蓄えてきているので、そうした知見を活用しながら系統の安定化を進めていきたいと思っています。

――ゼロエミッションの文脈で原子力発電の活用も取り沙汰されますが、沖電でも情報収集は続けるのでしょうか。

本永 原子力発電を導入する計画はありませんが、原子力も発電手法の一つではあるので電気事業者としていろんな発電の方法を研究、勉強する必要があります。これは以前から取り組んでいることで、原子力に限らず、世の中にどういう技術があるのか、情報収集は大切だと思います。

石炭火力削減への道筋

――「ゼロエミッション」に向け、電源構成は具体的に今後どのように変わっていきますか?

本永 まず足元では現在、電源構成比で2割強のLNG火力の比率を上げていき、2030年には3割に持って行く。LNGの消費量を拡大していくと同時に、老朽化した石油発電機を取り替えて、代わりにLNGのガスエンジンを入れていく。こうしたことでLNGの比率を増やしていきます。それにともなって石炭の比率を落とし、現在6割を超えている石炭の比率を4割強まで落とします。再エネ比率も徐々に上げて行き、現在5~6%の比率を2030年には1割程度くらいに持っていきます。

 石炭機についてはバイオマス燃料を混焼する取り組みも進めています。具志川火力発電所では2010年からすでに実施していますし、金武火力発電所でも今年3月からバイオマス燃料の混焼を開始しています。我々のバイオマス燃料は、これまでは県内で焼却処分されていた建築用廃材を木質ペレットにして活用しています。輸入バイオマス燃料と違ってもともと県内にあったものです。これを有効活用することは、それこそ地産地消につながるものだと考えています。

 加えて2030年までには、アンモニアや水素を既存の火力発電機で混焼できないかということも検討しています。

――ゼロエミッションに向けた投資計画は?

本永 新しい技術、例えば、アンモニアや水素への取り組みにどれくらいの投資をするかはまだ見えていません。来年度から新しい中期経営計画が始まりますが、次の3カ年でどういった取り組みを行い、その分の投資額はいくらになるのかは、これから詰めていくところです。さらにその先の2050年に向かってどんな投資が発生するのか。それは今後の課題です。

 いま足元で言われているところでは、水素の導入やアンモニアの導入にはかなりのコストがかかりそうだということです。具体的に導入していくためには、さらなる技術革新とコストダウンが必要です。そうした動向を見極めながら、コスト負担が大きくならないように、国や県のバックアップもいただきながら進めていきたいと思っています。

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