伝統芸能が直面する苦難-国立劇場おきなわ コロナ禍の模索と展望(上)
- 2021/3/13
- 新型コロナ・医療
“沖縄伝統芸能の殿堂”といわれる国立劇場おきなわでも新型コロナウイルスの影響で、半数近くの自主公演が中止や延期となっていた。事業収入が減り「財政的に厳しい面がある」との課題に直面する一方で、これまで蓄積してきた、座談会やワークショップなど舞台以外のイベントノウハウを生かして、新たな切り口からも沖縄芸能の魅力を伝えようとしている。コロナ禍の2020年に劇場が直面してきた困難を振り返りながら、今後の展望などを国立劇場おきなわの嘉数道彦芸術監督に聞く。
国立劇場おきなわと組踊300年
2004年に開場した国立劇場おきなわは、632席の大劇場と255席の小劇場、大小7室の稽古室と資料展示室、過去の舞台映像を視聴できるレファレンスルームから成る。沖縄の伝統芸能の公開を主な目的とし、自主公演を年間30公演程度開催している。
重要無形文化財である組踊や琉球舞踊を中心に、沖縄の伝統芸能のみならず、沖縄と関連のある本土の芸能やアジア・太平洋地域の芸能、独自制作の新作舞台、初心者向けの普及公演など、上演するジャンルは多岐にわたる。そのほか、組踊の次世代継承者の研修養成、沖縄伝統芸能に関する展示を実施するなど、文化の継承発展に寄与している。
組踊は1719年に首里城で初めて上演された。2019年は初演から300年の節目で、一年を通して例年にないほど記念公演や関連イベントが数多く行われた。2020年は、前年に知名度を上げた分301年目として挑戦の一年が幕を開けたところであった。
感染者の増減による苦渋の選択
2020年2月14日、県内で初めての陽性反応者が報告された。劇場がその影響を受けて最初に中止を決めた公演は、2月29日『男性舞踊家の会』と3月14日『島唄の響き』だった。
嘉数芸術監督は「沖縄の蔓延というより東京を中心に感染が拡がっている時期だった。本館といわれる東京の国立劇場も公演を中止したという連絡があり、全国的に自粛という風潮をふまえて国立劇場おきなわでも公演の中止を決めた」と振り返る。