伝統芸能が直面する苦難-国立劇場おきなわ コロナ禍の模索と展望(上)

 

半数に減った客席

 7月に入ると県内の米軍基地で感染者が続出。県内でも感染者が約2か月ぶりに確認され、いわゆる”夜の街”から感染が拡大、クラスターが相次いだ。

 7月には本来、組踊『久志の若按司』という3時間近い長編ものを予定していたが、出演者同士の接触を減らせる演目などの観点で議論を重ねた結果、演目を『執心鐘入』に変更することにした。とはいえ「無事に本番を迎えられるかわからない中で稽古を進めるのは、出演者もつらかったのではないか」と嘉数氏は述懐する。

 こうして再開した7月公演は、県のガイドラインに沿って“収容定員の半分程度以内の参加人数”に限定し、客席をひと席ずつ空けた形での客入れとなった。嘉数氏は当時を「半数に減った客席の光景は最初違和感があり、私たちも不思議な感覚だった。上演中はいつも通り客席からの熱を感じられたが、どこか張り詰めたような緊張感があった。来場者は、常連のなかでもご年配の方や県外の方が減ったように感じた。それでも足を運んでくださるお客様がいるということに心強く感じ励まされた」と語った。8月以降は多くの公演を中止、延期もしくは演目変更せざるを得なかった。

 また、劇場にとって県外との往来自粛も大きな課題の1つであった。年が明けて1月に行われる『琉球舞踊特選会』は家元クラスのベテラン琉球舞踊家の競演という人気恒例企画である。例年ならば県外在住の舞踊家も1、2人招いているが、出演が叶わなかった。

 THE BOOMの宮沢和史氏がプロデュース・演出を手掛ける2月予定の三線音楽公演『唄方』は、宮沢氏が東京在住である以上中止にせざるを得ず、次年度以降に延期することにした。

(つづく)

■国立劇場おきなわ公式ホームページ
https://www.nt-okinawa.or.jp/

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