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やんばるアートフェスティバル2020-2021 体験レポート
- 2021/2/13
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また、ここまでに紹介した写真2枚のように、光と影を自在に操りながら展開する作品がある中で、光や影、校舎という設定をまるで利用していない作品もあった。
たとえば写真の作品は、遮光カーテンを用いて理科室を暗黒にし、虫の標本ひとつひとつに光を灯している。鑑賞者は暗闇の中、照らし出されたテーブルの光を頼りに作品を鑑賞することになるが、この行動自体を「森の中で新たな生命との出会いを求める昆虫採集」に見立てているらしい。
表現者によって表現したいものの幅広さや「旧校舎内」という空間の使い方が変わり、また校舎であることや自然に恵まれた環境などを利用しても利用しなくてもOK、という自由なスタンスも本イベントの魅力だろう。
感性の底上げや、沖縄の魅力発見も
各教室の作品はもちろん、作品外を見たときの感性が底上げされる感覚もぜひ楽しんでいただきたい。
写真は作品をいくつか鑑賞する途中、2階からふと見えた景色。鑑賞中はそれぞれ作りこまれた作品に見惚れながらも、移動する合間の景色に自然の癒やしを感じるのは、屋内と屋外を行き来する本会場ならではの面白さだ。
ほとんどの人にとってやんばるの旧塩屋小学校までの道のりは、日常ではないだろう。だけどやはり、この場所、この旧校舎でなければいけない何かがあるような感覚は、3年前にはじめて本イベントに足を運んだときから今に至るまで、ずっとある。
また、景色だけでなく知らなかった「沖縄」を知ることができたり、新しい見方が生まれる機会になり得ることも触れておきたい。
たとえばこの作品は、沖縄県立博物館が所蔵する「朱漆山水楼閣人物堆錦椀(しゅうるしさんすいろうかくじんぶつついきんわん)」を、アーティスト染谷 聡氏が自身のインスピレーションに沿ってトレースしたもの。
「朱漆山水楼閣人物堆錦椀」は、大陸様式の山水楼閣模様が沖縄独自の技法である堆錦によって装飾されたもので、1963年には沖縄をあらわす工芸品として在中米軍用の3セント切手のモデルにも使われたそうだ。