【教員免許更新制度廃止へ③】失敗に学んで教員の資質向上策を

 
文部科学省
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 教員免許に10年の“有効期限”を設け、更新しなければ失効してしまうという教員免許更新制度(以下、「免許更新制」)。平成21年のスタート当初から多くの批判を浴び12年目の今年、ついに文部科学省が廃止の方針を表明しました。安倍政権が突拍子に作り上げた愚策などとも言われたこの制度。しかしその歴史を丁寧に振り返ると、創設までの地道な議論や創設後に改善が繰り返されてきたこともまた事実でした。廃止を契機に、真に効果的な教員の資質向上策を実現していくには、今回の失敗に学ぶ姿勢が大切です。

 子供の貧困や不登校、あるいは学力向上など、課題の多い沖縄の教育環境。現場を支える教員の効果的な資質向上策の構築は、沖縄の教育にとっても最重要課題の1つです。振り返るべき制度が歩んできた12年とは?そして、これからの教員の資質向上策に求められる視点とは?免許更新制の廃止に迫る3回シリーズの第3回目です。

■関連リンク
【教員免許更新制度廃止へ①】なぜ、更新制は失敗してしまったのか?| HUB沖縄
【教員免許更新制度廃止へ②】教員の危機的状況を脱する契機となるか | HUB沖縄

教員免許の歴史

 実は、教員免許そのものの歴史は古く、戦後直後に整備された日本の学校制度の1つとして、昭和24年にスタートしました。教職課程を修了することで、都道府県から学校種別の免許状が付与されるという、現在も続く教員免許のルールが規定されました。実は、教員免許制度に関しては、長きにわたってあらゆる観点から議論され、数えきれないほど大小様々な改善を繰り返してきた歴史があるのです。教職課程の認定制度や専修免許状・特別免許状の創設などの根本的な改正のほか、数次にわたる教職課程の科目要件の見直しなどを含め、数多くの制度改正が行われてきました。

更新制創設の源流

 改正を繰り返してきた教員免許制度ですが、更新制導入が政府ではじめて議論されたのは平成12年でした。総理の私的諮問機関として小渕政権から森政権に引き継がれた「教育改革国民会議」において「免許更新制の可能性を検討する」よう提言され、これまで大きな議論になることのなかった免許更新のアイディアが、新たな制度案として脚光を浴びることとなったのです。

 しかし、ここでの趣旨は不適格教員の排除が主な目的でした。この提言を受けた文科省の中央教育審議会では、公務員にも関わらず教員資格のみ有効期限を設けるのは難しいなどとして更新制導入を否定するとともに、不適格教員の処分強化としての「指導力不足教員の認定制度」や初任者・10年経験者への研修システムなどが打ち出されたのです。

 ところが、平成14年2月、導入を否決した答申からわずか2年後の平成16年10月、文部科学大臣が再び更新制導入を中教審に諮問します。大臣の強い意向を受けた中教審は一転、平成18年7月の答申で、ついに更新制を導入すべきと提言するに至ったのです。

「安倍政権の愚策」という安直なミスリード

 平成18年7月の更新制導入を提言した答申では「時代の変化に合わせて常に求められる教員の資質は変化するから、免許も更新制とすべき」という考え方を示しました。

 実は、このように平成18年9月に安倍政権が発足する以前から、更新制導入の道筋はすでについていました。その後、安倍首相肝いりで就任直後に始まった「教育再生会議」では、更新講習の「厳格な修了認定とともに、分限制度の活用により、不適格教員に厳しく対応すること」を提言。すでに導入を決定していた更新制に対し、さらなる強化策(不適格教員への対応の厳しさ強化)を注文してきたというのが実態だったのです。

 安倍政権が導入したというようなミスリード報道が未だに見受けられるのは、それだけ当時の安倍総理や教育再生会議の様子が強烈な印象を今でも国民に植え付けているということではないかと思います。しかし、イメージに先行されて安直に制度を批判するだけではいけません。当時の議論の流れを振り返り、目指した理想と超えられなかった挫折をしっかり見つめなければ、本当に効果的な仕組みは見出せないと思うのです。

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