浦添市長選が告示 軍港移設、玉城知事の対応焦点
- 2021/1/31
- 政治
日米合意で米軍那覇港湾施設(那覇軍港、56ヘクタール)の移設先となっている浦添市で31日午前、市長選が告示された。投開票は2月7日。届け出順に、自公推薦で3期目を目指す現職の松本哲治氏(53)と、共産や社民などが支援する前浦添市議の伊礼悠記氏(38)の2人が立候補し、一騎打ちとなる見込み。重要争点の一つである那覇軍港の移設については両候補で賛否が分かれており、計画を容認している玉城デニー知事の動静も注目される。
容認VS反対 軍港移設
那覇軍港の移設問題をめぐる経緯などは、これまで本サイトでも取り上げてきた。那覇軍港を浦添埠頭地区(浦添市)に移して返還する計画のことで、日米が1974年に返還に合意して以来、実現せずに47年が過ぎている。
(▽曲折の歴史 那覇軍港返還はいつ実現するのか https://hubokinawa.jp/archives/1835)
(▽那覇軍港返還は実現するのか 次期沖縄振興計画骨子案に軍港活用案の危うさhttps://hubokinawa.jp/archives/4224)
浦添市長選が全国的に注目されているのは、この那覇軍港の移設問題を抱えていることによる。移設計画に関して、菅政権が推す松本氏は容認、玉城知事が支援する前共産市議の伊礼氏は反対の立場。両候補の政策の違いは鮮明だ。
容認の知事「方向性は一致」
とはいえ、市長選を取り巻く構図は単純でない。移設反対の伊礼氏支援に回る玉城知事自身は、軍港移設を容認しているためだ。松本氏の2013年の市長選初当選後、軍港移設問題は紆余曲折をたどったが、現在は当事者である国と県、那覇市、浦添市が移設を進める考えで一致。玉城知事にとって今回の市長選は、仮に伊礼氏が当選すれば軍港移設の関係者の足並みが乱れ、ブレーキがかかるという矛盾をはらむものとなっている。
名護市辺野古の基地問題で一枚岩となって反対を掲げる「オール沖縄」陣営だが、那覇軍港の浦添移設に関する構成メンバーの立場は容認から反対まで濃淡がある。告示を前に、玉城知事は1月29日の記者会見で伊礼氏を支援する理由をこう説明した。
「オール沖縄の枠組みで、(米軍普天間基地の県内移設反対などを訴える)建白書の実現や、大きな枠組みで共に取り組んでいただける方をこれまで支援してきた。方向性は一致している」
市長選に向け、玉城知事は既に伊礼氏の事務所へ激励に訪れるなどしている。だが表立った応援は避けるとみられ、関係者によると、現時点で選挙戦中に知事が街頭でマイクを握る予定はないという。
基地問題で玉城県政と対峙してきた菅政権にとって、「オール沖縄」が対応をファジーにする軍港問題は「玉城県政の急所」(政府関係者)で、松本氏勝利を来秋の知事選への足がかりと位置付ける。逆に松本氏が敗れる事態となれば、1月の宮古島市長選に続く連敗となるだけに大きな痛手だ。