「給食しか食べるのない」児童の冬休み コロナ禍で教師にできることは

 

 翌日、彼の特別支援学級の担任に話を聞いた。

 「彼のおうちは、生活保護世帯でも準要保護世帯でもない。お父さんがお金を家にあんまり入れないらしい。だから、おうちにいつもお金がない。この前お母さんと学級費の話になったときに、『コロナでバイトが少なくなった』って言ってた。旦那の口座に入った、自分の分の10万円の給付金もどうなったか分からないって。DVとかはないけど、とにかく食べるのないなら食糧支援(家庭の余剰食糧などを集めて寄付する支援)を使った方がいいって話はした」。

 担任と母親が情報交換できていることにすこしほっとした一方で、「家庭の事情」では済まない、目に見えない貧困があることにAはショックを受けた。

コロナの影響に追われるうちに

 女性教師は「コロナで休校した分、授業時数取り戻すとかでバタバタしたからね。休み時間もいろんなところの消毒ばっかりで子どもとの時間が削られたし。親も余裕がない。家庭訪問もできなかったから、家庭状況を把握するのも時間がかかった。自分たちがまだ気付けていないだけで、人知れず岐路に立たされている保護者はもっといるんじゃないか」と言葉を続けた。

 コロナの感染拡大による影響に追われるうちに、子どもたち一人ひとりに十分に目を配る余裕が教師たちにも無くなってきている。

 28日は、仕事納めの日だった。Aは「もしかしたら、お腹がすいて私に会いに来るんじゃないか」と思い、お昼時は教室で過ごしたが、彼は来なかった。「休みは11日間。次会ったときにガリガリになってたらどうしよう。こんなに暗い気持ちで正月を迎えたことはない」。Aは休みに入ってからも、時間があれば学校の中庭や、彼の自宅周辺を通るようにしている。

 彼はいったいどんな年越しを迎えるのだろう。私たちに何ができるのだろう。

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