STOPコロナ差別!陽性患者を探してはいけない理由

 

 そしてこのソーシャルスティグマをきっかけに「新型コロナウイルスを患った人およびその可能性がある人」「コロナ対応する医療従事者やその家族」「クラスターが発生した施設や個人」に対する差別的行為やプライバシーの侵害などが起こっていると指摘する。

 田邉さんが掲げる新型コロナウイルスに関する差別の定義は以下だ。

・感染してしまった人をさらすこと
・感染してしまった人を犯罪者のように扱うこと(または感染を謝罪すること)
・発信源が分からない誤った情報や噂の拡散(チェーンメール)
・差別的な表現(例)集団感染の容疑者

 実際に、沖縄県内でもある地域内で新型コロナウイルス感染者として個人名が特定された事件があった。感染者の名前はSNSを通じて瞬く間に拡散された。その個人はまだ小学生だったにも関わらずだ。

 田邉さんはこの事実を知り、もし自分の子どもだったらと想像してとても嫌な気持ちになったと表情を曇らせ、言った。「保身として情報を収集する意味は理解できますが、小学生の名前を拡散するのはやりすぎだと思いました。」

 他にも、医療従事者への差別として、看護師の子どもが保育園で拒否をされるなどの事例を憤りとともに語った。

感染者を「探さない」啓発で、私たちが得られるもの

沖縄県へのポスター贈呈式

 そんな疑問を持つ中、田邉さん自身の子どもが通う保育園で「濃厚接触者が出た」という話が聞こえてきた。その時にどこの組かを知りたくなり、「そうかこの気持ちか」と理解したのだそうだ。

 だがその時、ソーシャルスティグマを知っていた田邉さんは自問した。「それを知ってどうなるんだ。」本来、私たちは感染した人が隣にいてもいいように対策しないといけない。そのためにソーシャルディスタンスやマスク着用などのルールが敷かれているのだ。

 だが田邉さんが無意識的に思った「探したい」という気持ちを「探さない」に変換するには理由が必要で、そのためにはソーシャルスティグマについての理解を多くの人に広める必要があると確信した。

 実際、冷静に考えると「探さない」ことにはメリットもある。コロナ差別が蔓延すると、感染した人が差別されることが当たり前になってしまう。すると自分が感染した時に差別されることへの不安感により、「陽性を出したくないから検査を受けない」人が増えてしまうだろう。そうなると症状を隠して行動してしまう人が増え、それこそが感染拡大に繋がってしまうのだ。

 恐れてやっていることが、感染拡大に寄与している可能性がある。それこそが「コロナ差別」の怖さなのである。

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