那覇軍港問題 松本浦添市長に聞く “北側案”受け入れの背景(下)

 

 8月18日、米軍那覇港湾施設(那覇軍港)の那覇港浦添ふ頭への移設を巡り、浦添市の松本哲治市長は、自らが公約で掲げる、港湾内南側を埋め立てる浦添市案を覆し、県や那覇市が推す、港湾内北側を埋め立てる案を受け入れた。松本市長にその経緯を聞く連載の第2回では、民港計画の見直しを視野に入れた戦略などを語る(連載の第1回目はこちら。https://hubokinawa.jp/archives/2025

「知事、最初で最後のチャンスです」

 松本市長は幾度となく繰り返した。「日本政府と米軍は『地元合意が形成されれば北でも南でも構わない』との立場でした」。地元合意、すなわち沖縄県・那覇市と折り合いが付けば、軍港位置を南側にずらす浦添市案が実現するかもしれなかった。

「だから3年半前に2期目の出馬をした時に『軍港を受け入れる代わりに、せめて南の端に造ることをお願いする』と表明し、当選したんです。『受け入れはやむなしだけど南側に』というのが浦添市民の民意だったはずです」

 2期目の当選を果たした2017年2月に、時は戻る。

 松本市長は県、那覇市との三者会談を要求し、同6月に浦添市議会は県、那覇市に早期の協議を求めて意見書を提出。それらを経て、同9月に初めての三者会談を行うことができた。非公開のその場では、翁長雄志県知事(当時)、城間幹子那覇市長がいた。松本市長は翁長知事にこう伝えたという。

 「知事、最初で最後のチャンスです。浦添の民意が出ているからという理由で、浦添市案を飲んでください。キンザー跡地真っ正面にこんな軍港を造ったのはあなただと、将来にわたって言われ続けることになるんですよ。上手い落としどころは浦添市案に乗ることですよ、知事」

 松本市長にはこういう思惑があった。地元自治体の選挙結果を受けて現行計画を見直すことは、沖縄の自己決定権や民意の尊重をうたう“オール沖縄”サイドである翁長知事と城間市長の理屈にも合致し、浦添市案の実現を掲げた松本市長の公約も守られ、民意の主体である浦添市民の願いも政治に反映される。全員が納得できるはずだ、と。

次ページ:

1

2 3

関連記事

おすすめ記事

  1.  サッカーJ3のFC琉球が、第2次金鍾成(キン・ジョンソン)監督体制下の初陣を白星で飾った…
  2. 今季から琉球ゴールデンキングスに加入したアレックス・カーク(左から2人目)やヴィック・ローら=16…
  3.  FC琉球の監督が、また代わった。  サッカーJ3で20チーム中18位に沈む琉球は1…
  4. 戦前に首里城正殿前に設置されていたバスケットボールゴールを再現した首里高校の生徒ら=8月27日、那…
  5.  8月12日、浦添市のアイム・ユニバースてだこホール市民交流室は熱気が渦巻いていた。ステー…

特集記事

  1. 再びFC琉球の指揮を執ることになり、トレーニング中に選手たちに指示を送る金鍾成監督=19日、東風平…
  2. ヴィック・ロー(中央)の入団会見で記念撮影に応じる琉球ゴールデンキングスの(左から)安永淳一GM、…
  3. 沖縄県庁  沖縄県は、地域の緊張を和らげようと、4月から「地域外交室」を設置し、照屋義実副知…
ページ上部へ戻る ページ下部へ移動 ホームへ戻る 前の記事へ 次の記事へ