那覇軍港問題 松本浦添市長に聞く “北側案”受け入れの背景(下)

 

切り札としての「民港見直し」

「悔しいという感情はありますよ。パルコの前の海を見るだけでも『私の手で埋めることになるのか』という思いに駆られて涙が出てきます」。

 そこまで話す松本市長は、なぜついに北側案を受け入れざるを得なかったのか。

 それは「県や那覇市と対立し続けて地元合意が作れないまま、議論が決裂して押し切られると、浦添市にとって最悪の結果が残る」と考えたからだ。軍港のみならず民港までもが、現在の浦添市の意向が反映されていない現行計画で実現してしまう、ということだった。キャンプ・キンザーの返還は2025年以降と期日も迫ってきており、開発計画の策定は待ったなしの状況だ。ギリギリの譲歩が求められる格好になった。

 「5対1の圧倒的少数に立った今『それでも反対し続けて議論が決裂する』ということだけは、感情論を置いてでも絶対に回避しなくてはなりませんでした」。

 もしも現行計画が残ると、民港は物流倉庫のコンテナヤードになってしまう。一方、浦添市が描く将来像は、イノー(サンゴ礁に囲まれた浅い海)の美しさを活かした、物流のみならず“人流”が活発な「国際的なリゾート地」だ。「軍港の場所も希望が通らず、民港開発の主役になれない」という事態を避けるためには、一旦軍港の位置は飲んででも民港の協議は続けないといけなかった。

 「当時はキンザーの返還までは想定されていなかったから物流の港の計画でしたが、返還が決まった今、こんなナンセンスなことはありません。(軍港の無条件返還など)ベストの道筋が実現できなかったからこそ、よりベターに、さらにベターにと交渉を進めなければなりません。とにかく、最悪なのは『民港までもが結局、現行計画のままになりました』ということです」

 浦添ふ頭自体が今でも物流中心の開発になっていることに疑問視する。

 「そもそも沖縄の物流は増えていません。物流のための埋め立て面積がこれからもそんなに必要なのでしょうか。量ではなくスピードで勝負するなど物流も変わっていかないとアジアでは勝てないはずです」

3期目出馬で市民が審判

 今回の現行案受け入れには「経済界に向けた選挙前のアピールだ」という声も挙がった。

 「全く何を言ってるんだ、という話ですよ。分析としては大間違いです。『浦添の海を守るため、国も県も相手にして断固戦い抜きます』と言う方が選挙では強いんです。ただ、国や県を相手に(移設交渉で)勝てないことが分かっている中で、『5対1でも戦い続ける』と言って選挙に出るのは、有権者にとって誠実な選挙と言えるでしょうか」と問う。

 松本市長は9月16日の市議会定例会で、3期目の出馬を表明した。

 その議会では軍港建設に反対する市議から「国際法に違反して米軍によって奪われ、現在は遊休化している那覇軍港をなぜ浦添に造らなければならないのか」との追及も受けている。市民の審判は来年2月の市長選で下されることとなる。

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長濱 良起

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フリーランス記者。
元琉球新報記者。教育行政、市町村行政、基地問題の現場などを取材する。
琉球大学マスコミ学コース卒業後、県内各企業のスポンサードで世界30カ国を約2年かけて巡る。
2018年、北京・中央民族大学に語学留学。
1986年、沖縄県浦添市出身。著書に「沖縄人世界一周!絆をつなぐ旅!」(編集工房東洋企画)

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