沖縄の農政課題を聞く JAおきなわ前田典男理事長インタビュー

 
JAおきなわ代表理事理事長の前田典男氏

 6月にJAおきなわ代表理事理事長に就任した前田典男氏(63)に、直面する県内農業の課題や解決手段、県内農業振興の「要石」JAおきなわの取り組みなどを聞いた。新型コロナ感染症、「ウクライナ危機」など世界情勢の激変が県内農家に与えるダメージは大きい。農業の持続可能な発展に向けた具体策にも触れた。

県内農業の現状と課題について

 目下の課題は、ウクライナ危機を背景とした原油・生産資材価格高騰への対応だ。肥料、飼料、輸送費など、あらゆる生産コストが上昇し、県内農家の経営は深刻な状況が続いている。農畜産物の販売価格は市場の需給動向に左右されるため、生産コストの上昇分を販売価格に上乗せすることは困難だ。

 例えば、宮古家畜市場の8月における「子牛取引価格」は、前年同月から約15万円も下落した。飼料等の生産コストが上昇する一方で、販売価格が下落する状況に、農家は極めて深刻な状況に陥っている。こうした状況は、県内全体で課題となっている。

 サトウキビ生産についても、肥料高騰が続き、JAおきなわは、その緊急対策として6~10月までの期間、「肥料の供給価格据え置き」を独自で実施した。政府は肥料の価格上昇分の7割を補填する方針を打ち出している。

 こうした状況を踏まえ、JAおきなわは、7月には生産者団体が一体となった決起大会を開催し、早期の段階で、国、県に対する要請行動を展開した。肥料のみならず、飼料についても国の手厚い補助対策を早急に行ってほしいとの要望を行っている。

 長期化するコロナ禍で、JA職員と農家組合員との関わりが希薄になったことも懸念することの一つだ。地域でのコミュニケーションの役割を果たしている「支店まつり」や「事業報告会(感謝のつどい)」も2年連続で中止となり、「通常総代会」も2年連続の書面開催となった。

 渉外的な役割を担う営農指導員やTAC(担い手指導員)、LA(ライフアドバイザー)の活動も長期間制限された。組合員と役職員との安全を前提とした関わり方を模索し、信頼とコミュニケーションの深度化に努めていく。

離島農業の現状と諸課題への対応について

 課題としては、やはり離島であるための物流面での不利性が挙げられる。これまで一括交付金を使った「農林水産物流条件不利性解消事業」での輸送費支援を活用してきたが、新たな制度変更で、航空便を使用した県外出荷の補助単価が引き下げられて、離島農家からの落胆の声が大きい。同事業の後退は離島農業に大きなダメージを与えることが必至なので、JAおきなわからも、しっかり課題について検証し、必要な助成措置を提起していく。

 台風などの風害や、病害虫対策のためのビニールハウスの栽培施設も、同交付金制度を活用したものだが、単年度予算が半額に減額された。耐候性ハウスの離島での積極導入のために補助額を増加、強化するよう国、県に求める。

今後のJAおきなわの具体的な取り組み策

 農業、JAを取り巻く環境は、さまざまな課題を抱えているが、事業としての取り組みの基本方針は、「第8次中期経営計画」の着実な実践だ。JAおきなわの「新たな10年ビジョン」(なりたい姿)として、地域農業、地域社会を支えるJAを目指し、「拡げよう協同(ゆい)の輪」を掲げ、①持続可能な農業の実現②豊かで暮らしやすい地域共生社会の実現③協同組合としての役割発揮―を提起し、さらに5つの柱を据えた。

 また、昨年度より「農業経済事業経営改善プログラム」を展開し、本格的な「てこ入れ」に着手した。その結果、楽観視はできないが、損益は徐々に改善しつつある。

 7月には「物流統括推進室」を設置し、青果物や生産資材輸送の効率化に向けた体制を整えた。物流・在庫管理などの抜本的見直しを図りたいと思う。

 販売力強化については、小売店、量販店、加工販売を行う事業者を「実需者」としてターゲットにし、青果物の直接販売を強化していく。

 さらに、黒糖在庫解消に向けた「マーケティング戦略室」も設けて、新規取引先の開拓にも取り組んでいる。

 コロナ禍の「巣ごもり需要」を背景にして、昨年度のファーマーズマーケットの販売高は、76億5000万円(前年度比4億3900万円増)と過去最高額を記録した。今後とも県内生産者と消費者を結ぶ拠点として強化していく。

職員一丸で諸課題の解決に取り組む

 今年、「JAおきなわ」は発足から20年の節目を迎えた。日本復帰50年とともに「新沖縄21世紀ビジョン」も策定された。国、県の施策に歩調を合わせ、職員一丸となり、さまざまな諸課題の解決に向けて取り組んでいきたい。

 私は、就任のあいさつで「JA職員の満足度を高めることも大事だ」と述べた。職員のやる気を引き出すことが、結果として「組合員の満足度」を高めることにもつながると考える。極めて厳しい状況下にあるが、県内農家のために、JAおきなわが新たなステージに向かっていける重要な3年間であるという認識で、誠心誠意、理事長の職責を果たしていきたいと強く思っている。

【プロフィル】前田典男(まえだ・のりお)(63)=1958年11月1日、大宜味村字津波生まれ。那覇高校を経て琉球大学法文学部法律学科卒、82年県信用農業協同組合連合会入会、JAおきなわ信用統括部長、資金証券部長、常務理事、2019年同代表理事専務などを歴任し、22年6月代表理事理事長に就任。

(記事・写真 宮古毎日新聞)

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