地域課題の解決案競う「沖縄RESASチャレンジ杯」で名桜大に最優秀
- 2022/9/10
- 社会
内閣官房(デジタル田園都市構想実現会議事務局)と経済産業省が提供している地域経済分析システム(RESAS)を活用し、データに基づいて地域経済を分析した上で活性化のアイデアを競うコンテスト「沖縄RESASチャレンジ杯」の公開審査会が9月2日、那覇市おもろまちの沖縄総合事務局で開かれた。
審査会当日は県内在住者から応募があった全18エントリー作品の中から、第一次審査を通過した5チームがプレゼンテーションを披露。審査の結果、最優秀賞は沖縄県産コーヒーに付加価値をつけて“やんばるのホンモノの味”を体験する企画についてプレゼンした名桜大学RESAS研究会に贈られた。
そもそも「RESAS」って何?
主催は沖縄産業立地・地域活性化推進協議会で、地域特性に応じた課題を分析できる人材の育成や、課題解決のためのアイデアの創出・実現を促進することが目的だ。
今回のイベントで利活用を促進しているRESASとは「Regional Economy Society Analyzing System」の略で、日本国内の自治体の産業構造や人口動態、人の流れなどの官民ビッグデータを集約して、グラフや数字などで可視化するシステムだ。国が提供しているシステムで、WEBサイトにアクセスすれば誰でも使用することができる。
データ分析支援機能を使えば、人口や産業、観光客などのテーマを選別して自治体を指定し、それぞれのテーマに沿ったグラフや数値などの分析画面が瞬時に表示することができる。さらに、分析の視点に併せて全国傾向と比較の上での特徴なども示される。
主に各自治体の施策立案や検証、地域課題に取り組む団体などに利用されていることに加え、教育の場でもデータに基づいた分析・問題解決する能力育成のために活用されており、サイト内には学校向けの授業モデルも多数掲載されている。
最優秀賞はやんばるを味わう1杯千円のコーヒー
最優秀賞の名桜大学RESAS研究会は「沖縄・やんばるのコーヒーと水と土でホンモノを味わおう」と題したプレゼンテーションをオンラインで発表した。同会が2020年から沖縄県産コーヒーに関連した活動を継続する中で、現在周知イベントを企画しているが、県産豆のコーヒーは生産量少ないため1杯1,000円超の値がついてしまうことが分かった。
そこで、価格設定を変えずに付加価値を高めるため、やんばる産のコーヒーを、やんばるの土で作った古我知焼の器に、やんばるの水を使って淹れるというアイデアを説明した。その前提知識としての名護市の人口や産業についてRESASを使用したデータで示しながら、コーヒーを生産する農業と、器を作る窯業が名護市の産業の中で「稼ぐ力のある産業」として分類されることを「強み」と強調した。
水については、沖縄を代表するブランドの「オリオンビール」に着目し、その仕込み水と同じやんばるの水を使うことで独自性とストーリーを付与できることに言及した。これらの要素をトータルして、やんばるのコーヒー豆、水、土を感じられる1杯のコーヒーを演出することで、やんばる、ひいては沖縄の魅力を体感できる付加価値を与えるというアイデアを披露した。
「データ分析の力は武器になる」
最優秀賞のほか、データを十分に活用したとしてデータアナリシス賞に沖縄国際大学那覇チームの「那覇国際通りを地元客で元気に!」、そして地域経済寄与の観点から実現性を見据えたアイデア賞には八重瀬ラボの「農業で八重瀬を豊かに」がそれぞれ選ばれた。
審査員を務めたブルームーン株式会社代表取締役の伊波貢さんは講評で「それぞれのチームのプレゼンはよく出来ていました」と評価した上で、「データに基づく分析は大事で、情緒的ではなく合理的に事実を把握することが重要です。ビジネスの世界はそれが全てです」とデータ分析の重要性を強調した。
また、今回の発表全体として「学生や若い世代だからこそ出てくる、メタバースなどのトレンドを踏まえたアイデアや、他とは違うエッジの効いたアイデアも出してほしい」とも述べつつ、「データ分析の力を磨き、合理的に説明する癖をつけていけば、どんな分野でも将来的には武器になるので、これからも頑張ってほしい」と激励した。
RESASに関連して、内閣府地方創生推進室が主催する「地方創生★政策アイデアコンテスト2022」の募集が開始されており、9月30日まで応募を受け付けている。このコンテストではRESASと、新型コロナウイルス感染症が地域経済に与える影響(人流、消費、飲食など)のデータを提供する「V-RESAS」を活用して地域課題を分析し、地域を元気にする政策アイデアを競う。
募集対象は「地方創生やデータ利活用に関心を持つ地方公共団体、民間企業等の社会人や学生など、どなたでも応募が可能」となっているので、アイデアがある人は是非応募を。その1歩が、もしかしたら社会を変えるきっかけになるかもしれない。