【参院選】伊波氏と古謝氏の経済政策は? 沖縄選挙区

 

 伊波氏は、自立型経済の構築に向けて、DX(デジタル・トランスフォーメーション)とイノベーションなどで稼ぐ力の強化を図ることに加え、情報通信産業、観光産業をはじめとした地元中小企業に対する支援措置を強化するとしている。官民ともに非正規雇用から正規雇用への転換も図り、「同一価値労働・同一賃金」の実現も盛り込む。また、最低賃金を1000円以上に上げ、将来的には1500円を目指す。
 玉城デニー県政と連携して、「新・沖縄21世紀ビジョン基本計画」を推進することで、アジア経済を取り込みながら県経済の活性化も図る。さらに、国発注の公共事業に対して県内事業者の参入を支援し、沖縄振興予算の大半が県外に出ていく「ザル経済」の改善を目指す。

 古謝氏は「しなやかで強い経済を持つ沖縄」を大きなビジョンの一つに据える。多様な産業振興を進めることで、パンデミックや国際情勢の変化といった要因に対しても中長期的に対応できる経済を作る。
 “しなやかで強い経済”を実現させる策として掲げるのが「新5K経済」だ。観光、健康、環境、海洋、起業の各分野を促進させることで、沖縄の魅力を生かした産業発展を見据える。沖縄を日本・アジアの「起業の聖地」とする「スタートアップアイランド構想」を進めることや、沖縄に豊富に埋蔵する水溶性天然ガスなど海洋資源の利活用にも取り組む。新規産業だけでなく、既存産業の底上げにも取り組んで県民所得向上につなげる。公共事業の県内企業受注率向上も盛り込んだ。

経済基盤のインフラ整備

 経済活動の基盤となるインフラ整備も重要だ。全国で唯一、鉄道が整備されておらず、交通渋滞の深刻さは東京や大阪を上回るほどとも言われる。

 伊波氏は、鉄軌道やLRTを含む公共交通の整備や、空港インフラ・クルーズ船バースの拡充で経済基盤を整えることを掲げている。また、大型MICE施設やスーパーヨットハーバーの整備などで、沖縄県の掲げる「東海岸サンライズベルト構想」の実現に取り組む。

 古謝氏は、空港・港湾施設の機能拡張と強化で、人流と物流の循環を進めることに加え、「定時・高速・長距離」の公共交通を推進、渋滞解消や観光効果につなげるとしている。また、南北や東西に延びる高規格道路(国道バイパスなど)の整備も進める。

島しょ県・沖縄の地域振興

 沖縄県は多くの離島を抱える島しょ県であることから、離島振興も沖縄の将来にとって大切な鍵になる。また、沖縄本島では人口の大半が中南部に集中する一方で、過疎化が進む北部の振興も必須の課題だ。

 伊波氏は、移動や物流などのコストを低減することで、離島の不利性を解消するとしている。第一次産業への支援を通して、バランスの取れた地域振興を図る。サトウキビ産業の活性化に向け、製糖工場の建て替えを国の支援で行うことにも言及している。

 古謝氏は離島の基幹産業である観光業・農林水産業を守り「稼げる産業」にすることを掲げる。離島部においても地理的不利性解消の観点から、空港、港湾、道路、橋といったインフラ整備を進める。国と県、地元市町村が一体となった基地の跡地利用計画にも取り組む。

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長濱 良起

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フリーランス記者。
元琉球新報記者。教育行政、市町村行政、基地問題の現場などを取材する。
琉球大学マスコミ学コース卒業後、県内各企業のスポンサードで世界30カ国を約2年かけて巡る。
2018年、北京・中央民族大学に語学留学。
1986年、沖縄県浦添市出身。著書に「沖縄人世界一周!絆をつなぐ旅!」(編集工房東洋企画)

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