宿敵の領地で眠る阿麻和利

　第一尚氏王統期に起こった大きな乱が「護佐丸・阿麻和利の乱」だ。若く勢いのあった勝連按司・阿麻和利は首里王府攻略を目論むも、中城グスクに居城する強力な按司護佐丸の存在が邪魔だった。そこで時の尚泰久王に護佐丸が首里に攻め入る準備をしていると欺き、征伐許可を得る。

　忠臣護佐丸は王の命には背けないと戦わず自害し、護佐丸を倒した阿麻和利は一気に王府強襲を図った。しかし阿麻和利自身の妃であり尚泰久王の娘でもある「百渡踏揚」の命を張った逃避劇によって陰謀が王の知るところとなり、阿麻和利は滅ぼされてしまうという内容だ。

　阿麻和利のものとされる墓が読谷村楚辺の民家に囲まれた一角にある。一説には阿麻和利が屋良（現在の嘉手納町屋良）の出身で、王府軍に追われながらも故郷の地まで逃げ延び、その近くで命尽きたのではないかと伝わる。

　この墓がある一帯は「親見原（ウェンミバル）」と呼ばれ、ウェンミは沖縄の言葉で「降参」を意味する。また昔から地元の人からは「クンチェー墓（乞食墓）」と呼ばれ、葬られている人物が偉大であるからこそ敢えて見窄らしく目立たない造りにしているのだという。

　皮肉にも、かつての宿敵護佐丸の領地であった読谷の地に眠る阿麻和利。その背景には一体どのような物語があったのだろうか。対照的に護佐丸の墓は大層立派な造りで中城城跡近くに建てられており、護佐丸を始祖とする「毛氏」は琉球の五大名門に数えられている。