必要性増す沖縄北部の救急救助ヘリ メッシュが今月から活動再開

 

帰島、急患搬送 求められる飛行機の再開

事故機を調査する運輸安全委員会の職員ら=3月15日

 3月に事故があった飛行機については、ヘリと同様に急患搬送を行っていたほか、治療を終えた離島患者を島に戻す「帰島搬送」も担っていた。活動範囲は半径700キロ(ヘリは半径50キロ)に及び、南は与那国島、北は奄美大島までをカバーしていた。

 メッシュによると事故後、飛行機が請け負っていた案件について、「沖永良部島から沖縄本島の病院に患者を搬送できないか」「本島の病院から離島に患者を戻せないか」など4件の問い合わせが今月8日までにあったという。

 帰島搬送については、患者の家族にとっても重要な支援となる。塚本理事長は「本島にいればお見舞いや病院の手続きも比較的容易だけど、毎回フェリーや飛行機で行くとなると経済的な負担は計り知れない。寝たきりなど、医療機材が長時間外せない患者は、一生故郷の島に帰れないリスクもある」と説明する。

 メッシュの飛行機であればどの島からも直行で発着できるため、本島から1時間以下で帰れる島が多い。乗り継ぎが必要なこともある民間機やフェリーに比べて患者が医療施設から離れる時間を大幅に短縮できるため、島に戻れる可能性は高まる。「『島に帰れるようになったよ』と伝えると、急に目の色が変わったりする」(塚本理事長)と患者の心の安定にも大きく寄与している。

 国土交通省の運輸安全委員会による事故報告書がまとまるまでにはまだ時間がかかると見られ、飛行機の活動再開に向けては医師など連携する関係者の理解を得ることや、高額な機体をどう購入するかなどハードルは多いが、塚本理事長は離島医療のためにも「再開はしないといけない」と自らに言い聞かせるように話す。

 事務組合の事業を除けば、これまでほとんどの活動費を寄付金で賄ってきたメッシュ。現在も組織の維持、運営には寄付が欠かせない。行政による支援も含め、改めて県民全体で恒常的な島しょ県ならではの課題と向き合う必要がありそうだ。

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長嶺 真輝

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ながみね・まき。沖縄拠点のスポーツライター、フリーランス記者。
2022年3月まで沖縄地元紙で10年間、新聞記者を経験。
Bリーグ琉球ゴールデンキングスや東京五輪を担当。金融や農林水産、市町村の地域話題も取材。

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