新しい“沖縄の表現”を探求する「ナナイロノート」 鍵はローカル&ストイック
- 2022/2/1
- エンタメ・スポーツ
スモーキーなボーカルの一声に軽やかでリズミカルなギターのカッティングが続き、裏拍で刻むバスドラムがグルーブを作り出すスマートな楽曲の導入。長回しのカメラがワンテイクで捉えた画面。
YouTubeで不意に流れてきたその音と映像のクオリティの高さについつい目も耳も奪われ、約3分をフルで見終えて沖縄のシャッター会社のCMと知った時には思わず「え!?CMだったんかい!」と声に出してしまった。
この映像を配信しているのはYouTubeチャンネル「Nanaironote(ナナイロノート)」。沖縄出身の音楽家・望月誉さん(HOMARE)がプロデュースを手掛け、質の高い音楽と映像で沖縄の独自性を打ち出し、文化や魅力を発信していくことをコンセプトに据える。
チャンネル登録者数は5万人(2022年1月現在)で、ディズニー映画『アラジン』主題歌の歌詞をウチナーグチにアレンジした動画は170万回超の再生数を叩き出して“大バズり”した。「登録者数は県民の10%に当たる14万人を目指したいんです」と展望を語るHOMAREさんは、音のクオリティと洗練された“沖縄らしさ”にこだわりながら新しい発信の形を探求している。
音と映像へのこだわりで「抜け出す」
「誰でも音楽や映像の発信ができるようになった今の状況下でライバルがひしめく中から抜け出すために、まずは作品のクオリティを高くすることが必要不可欠だと思ったんです」(HOMAREさん)
ナナイロノートの作品の音は、県内の多くのインディーズバンドがレコーディングして作品を作り出してきた“老舗”スタジオ「3rd Garage Studio」で収録されており、なおかつ打ち込みなどのデジタル処理をせず、三線や太鼓などの音色も含め徹底的に「生音」にこだわっている。
さらに、映像もプロのカメラマンによる撮影で、ほとんどの作品がカットを割って編集せずにひと繋がりのシーンで画面を見せる「ワンカット」の手法を用いる。HOMAREさん自らロケーションを決め、撮影の振り付けや演者の立ち位置などは環境や状況などに応じてその場で決めていくという、まさにライブのような形で制作しているという。
「今のような活動形態になってからは、楽曲アレンジの作業中に頭の中で映像も同時にイメージするようになりました。ミュージシャンとしてやってきて、ここ最近の大きな変化ですね」