「知ってるけど他人事」と思っている人たちに伝えたい多様性についてのこと

 

他人事ではない“私たちの話”として

 ―多様性への理解が広がり始めている一方で、なかなか実感が持てない人も割と多くいるように感じます

「そうですね。電通が2020年に実施したLGBTQ+についての調査では、ストレート層5,000人余りの中での関心の持ち方で、最も多いのは『知識ある他人事層』だったという結果が出ています。これは、知識としてLGBTQ+を知ってはいるものの自分にはあまり関係ないと感じているということです。

 こうした人たちは『好きなようにすればいい』と思ってるだろうし、実際にそう言葉にもします。これはマイノリティを否定しているわけではないのですが、人権について理解することをどこかで止めている面があるとも言えます。こうした無自覚・無意識の要素が、“他者としてのマイノリティ”の人たちが日常で感じる生きづらさや働きづらさにつながっていると思うんです。

 人権について考えることをおろそかにすれば、いつか自分や自分の身の回りの人にも問題が及ぶことがあると思います。人権についての話は実はみんなが当事者であり、みんなにとっての“私たちの話”だと考えた方がいいですね」

 ―そうした人たちにもより理解を深めてもらうということも含めて、現状で感じている課題はどのようなことでしょうか

「沖縄は全国的にも多様性に関心が高い方だということも言われていて、那覇市が2016年に全国で5番目にパートナーシップ制度を導入して、2021年10月には浦添市も続きました。でも、全国には既に県単位で採用している場所もあるので、16~21年の間の動きとしては遅いんじゃないかと感じています。早めに県全体での取り組みにシフトすべきでしょう。

 ただ、今のままだとスローガンを掲げて目標数値などを設定して『ゴールがあるからやる』という傾向になっているんです。そうすると『メリットがあるからやる』ということが動機の1つになってしまいます。この段階からどのように“日常のレベル”まで落とし込んでいけるかというのは大きな課題でしょうね。

 マイノリティや多様性についての伝え方、考え方についても、まだまだ理解が必要だと思います。一口にマイノリティと言っても、そこには当事者の数だけさまざまなケースがあって、ある人の事例を1つ2つ知ったところでどうにもならない所があります。マイノリティ間でも例えばLGBTQ+当事者だからと言って、必ずしも女性の権利などに理解が深いわけではないということも当然あります。

 当事者であるだけではダメで、自分のマイノリティ性をきちんと俯瞰する視点が必要ですし、それを踏まえた上で社会システムと照らし合わせていかなければならないと考えています」

「誰かを傷つけることはしないように」

 ―多様性を巡る話はプライベートでパーソナルな部分も含むので、発言1つとってもかなり気を遣う必要があると思います。伝え方や考え方で、心構えとしていることは何ですか

「先ずは、自分の発言で誰かを傷つけることはしないこと。今のような議論ができる状況になるまでにたくさんの人が差別で傷ついてきたし、今現在もまだ傷つけられている人たちがいます。

 『私は絶対に差別・偏見をしません』ということを言う人は、すでに無自覚に差別をしてしまっている可能性があって実は怖いんです。そうではなくて、自分が誰かを『差別をしてしまうかもしれない』『傷つけてしまうかもしれない』と常に思うことで、他者への配慮はきめ細かになっていくと思っています。

 私は直接的な差別・偏見の被害のど真ん中にいるわけではないのですが、1人の当事者としてマイノリティの立場にいる人たちの怒りや悲しみを、理解を深められるような、共感を呼べるような形で翻訳するスピーカーとしての役割が自分にできることの1つだと考えています。

 自分の置かれた立場を自覚することと、それを踏まえての自戒も怠ることなく発信を続けていきたいですね」

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真栄城 潤一

投稿者記事一覧

1985年生まれ、那覇市出身。
元新聞記者、その前はバンドマン(ドラマー)。映画、音楽、文学、それらをひっくるめたアート、さらにそれらをひっくるめた文化を敬い畏れ、そして愛す。あらゆる分野のクリエイティブな人たちの活動や言葉を発信し、つながりを生み、沖縄の未来に貢献したい、と目論む。

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