第一級史料をいつでもどこでも 琉球外交史をデジタル化して公開

 
トークセッションの様子。左から山田浩世さん、赤嶺守さん、冨田千夏

研究の広がりに期待

東南アジアで交易をしていた『レキオ』と呼ばれる人たちが、琉球の人たちだったと解明される根拠になったのも『歴代宝案』なんです」と赤嶺さん。15~16世紀の東南アジアの史料はほとんど存在しないが、『歴代宝案』はその時期の歴史を紐解く貴重な記録だ」と説明する。

 中国や韓国で琉球研究がブームになっている現状について触れながら、デジタル化により「海外の人たちでも容易に検索できるようになったことで、研究に広がりが生まれました」と今後の琉球史研究の可能性に期待を寄せ、「しっかりと運営して共有の財産になっていくことを願いたい」と語った。

 また、編集作業については「第一線の歴史学者たちが集って編纂をしているので極めてクオリティが高い」と太鼓判を押した。デジタル化の重要性とともに「凄腕の研究者がまとめた書籍版があってこそ」と、編集に携わった関係者への敬意も示した。

 コラムの執筆を担当している琉球大学附属図書館情報サービス課の冨田千夏さんは、人名や地名の検索の仕方などについて紹介。注意点として中国側の史料で使われている「唐名」で打ち込む必要があることなどを解説した。

 さらに史料の“楽しみ方”として、書き下し文を音読して語感やリズムを味わうというやや玄人向けの堪能の仕方を提案。赤嶺さんに「音読が楽しいのはあなたが研究者だからだよ」と突っ込まれて会場から笑いが起きる場面もあった。

「日本はアジアでデジタル後進国」

 トークセッションでは、デジタルアーカイブの公開によって何ができるようになったのか、これからどのような変化を見込めるのかをテーマに、3人で語り合った。

 赤嶺さんは台湾大学が沖縄に先んじて(台湾大学蔵写本の)『歴代宝案』をデジタルで公開していたことを紹介し、「実は日本はアジアの中ではデジタル後進国なんです。どんどんデジタル化を進めている中国や韓国に比べると30~40年は遅れていると言わざるを得ない」と指摘。日本の厳しい現状に危機感を示した。

 その上で、台湾大学で歴代宝案のユネスコ登録を見据えた動きがあることにも言及し「今後はどのように海外と連携していくかも含めて、文化遺産として共有する方法の模索をしていくことが必要でしょう」と展望を語った。

 一方で、山田さんは「沖縄は琉大図書館をはじめ、規模の大小はありますが市町村単位でもデジタルアーカイブを持っている所が多いんです」と述べた。「県民全体にとっての“共有財産”という位置付けだと言えるでしょう。その意味では色々な可能性があると思います」という。

 冨田さんは「色んな人たちが史料にアクセスできるようになったことで、今まで私たちには見えてなかった世界を可視化する面もあると思います」とした上で、「デジタルの世界でもっと人文学を発信できるようにしていきたいですね」と話した。

■関連リンク
琉球王国交流史・近代沖縄史料デジタルアーカイブ(沖縄県教育委員会)
琉球・沖縄関係貴重史料デジタルアーカイブ(琉球大学附属図書館)

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真栄城 潤一

投稿者記事一覧

1985年生まれ、那覇市出身。
元新聞記者、その前はバンドマン(ドラマー)。映画、音楽、文学、それらをひっくるめたアート、さらにそれらをひっくるめた文化を敬い畏れ、そして愛す。あらゆる分野のクリエイティブな人たちの活動や言葉を発信し、つながりを生み、沖縄の未来に貢献したい、と目論む。

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