第一級史料をいつでもどこでも 琉球外交史をデジタル化して公開
- 2021/12/28
- 社会
沖縄県教育委員会が琉球王国の外交文書集『歴代宝案』を中心とした歴史資料と、沖縄戦で失われた近代沖縄の新聞の見出しをまとめたデジタルアーカイブを12月14日から公開している。
18日に公開を記念したミニシンポジウムが開かれ、『歴代宝案』の編纂に携わる関係者がデジタルアーカイブについて解説した。登壇した名桜大学教授の赤嶺守さんは「世界的にみても大変珍しい東南アジア諸国などを含む琉球の交流史の一級史料に時間や場所を問わず直に触れられるのは画期的なことです」とデジタル化の意義を強調した。
琉球外交史を紐解く『歴代宝案』とは
『歴代宝案』は1424年から1867年の444年間にわたる期間の外交文書で、琉球側から送った文書と中国を中心とする諸外国から送られた文書の写しが収録されており、琉球王国の歴史を物語る貴重な史料だ。
しかし、その原本は明治政府による接収や焼失、そして沖縄戦で失われてしまっており、残されていた写本・影印本(写真複製本)とさまざまな史料を照らし合わせながら史料の精度を高める編集事業が1989年から続いている。
今回公開されたデジタルアーカイブでは、この『歴代宝案』の漢文表記の「校訂本」データ4842件をPDFで、読み下し文にした「訳注本」データ4355件をPDFとtxtデータで公開し、検索もできるようになった。
加えて、関連する参考資料として琉球中国交渉史についてのシンポジウム論文集や研究論文集、さらには明・清朝(ともにかつての中国)の琉球に関する行政規定をおさめた法典(明会典・清会典)も同時に公開している。また、交流史資料を知るための“入門”的なコラムも順次更新しており、『歴代宝案』についての基本的な情報が紹介されている。
新聞資料については、1898年~1914年の見出しのみ約25万件を先行公開している。今後画像データと紐づけて記事を閲覧できるようにするなど、拡充していく予定だという。
デジタルアーカイブの概要について説明した県教育庁文化財課史料編集班の山田浩世さんは「今後も順次内容は増やしていきます。生の歴史にいつでもどこからでも、誰でも触れられるようにしていきたいです」と話した。