「シビックテック」で困りごとを解決 市民と行政コラボの新たな潮流
- 2021/11/11
- 社会
災害時の状況把握・分析に貢献
杉本さんは5年かけて「ポイントクラウド(点群)」と呼ばれる、地形や建物などを聖地に再現できる3Dの点の集まりで静岡全域のデータを取得し、それをオープンデータ化した。全国の自治体に先駆けた先進的な取り組みで、今年7月に熱海市で発生した土石流災害の被害状況把握にも大きく貢献した。「明日起こるかもしれない災害に備えてのデータとして、非常に有用ということが分かりました」。
被災後の現地に立ち入ることが困難な中「被災前後のデータを比較して崩れた土砂の量を算出したり、現場の横断面図を作成したりすることで被害状況を詳細に把握できました」と振り返る。また、地形のデータがオープンデータ化されていたことで官民を超えてスムーズな連携がとれ、原因究明の迅速化にも一役買った。
さらに、杉本さんは点群データを蓄積する利点として「街の記憶」としてデジタルアーカイブにもなることに加え、仮想空間の3Dの街で現実空間では不可能な様々なシミュレーションも可能になることなども挙げ「活用の幅はさまざまあります」と強調した。
「失敗も共有できるマインドを」
最後のディスカションでは、全員がそれぞれの立場から意見を交わした。
立花さんは社会・地域課題への取り組みについて「エンジニアだけが集まっても何もできない」と前置きし、「課題を抱えてる人やビジョンを持っている人が集まって、そこに技術を持ち寄ることで面白いものを作り出すことができると思います」と話した。
行政と住民の信頼関係について話した玉城さんは「自分たちの街を良くしたいという思いは一緒のはずなのに、自治体職員がどこで困っていて、どこで助ければいいのか分からない」現状に言及した。「自分や他の誰かとも共通する困りごとの解決に向けて、発信をどんどんしていかなければいけないですね」
杉本さんは自治体職員として「失敗事例を共有することができるオープンなマインドを持つことが重要になると思います」と指摘。失敗事例を共有していないがために、全国各地で同じような失敗が起こってしまう状況を憂い「もう少し社会に許容されれば、良くなるのではないかと思います」と話した。
また、「オープンデータという言葉をみんなが当然だと思う時代が早くきてほしいです」と希望を述べ、「今は芽が出てきている良いタイミングで、環境が整っていると思います。今後沖縄の知見を静岡で活用する日がくるのを楽しみにしてます」と締めくくった。
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