軽石で物資入らず離島では「パンの争奪戦」 今はどこに漂着中?
- 2021/11/10
- 社会
沖縄県は9日、県内沿岸に押し寄せている大量の軽石がもたらした最新の被害状況についてホームページ上で発表した。県内にある全41港湾のうち、8日時点で9港湾が「大量に漂着有り(漁業、離島航路等に支障有り)」、9港湾が「少量漂着有り(漁業、離島航路等に支障なし)」と報告されている。漁港についても9日時点で全87漁港中11漁港が「大量に漂着有り」、26漁港が「少量漂着有り」とされている。
定期船の自由な運航が妨げられている伊是名島では、給油所でガソリンが不足しており、1台当たり2000円分までしか給油できないといった制限が設けられるなど、負担を分け合いながら軽石被害の影響を乗り越えようとしている。
本島北部を中心に大量漂着
軽石は8月に発生した小笠原諸島・福徳岡ノ場の海底火山噴火に由来するとみられており、沖縄県内では10月上旬に北大東島に漂着していることが確認されたほか、同月半ばには沖縄本島と久米島でも確認されている。船舶の航行や漁業、観光などの分野で県民生活に支障が出ている。
「大量に漂着有り」とされる9港湾は運天(名護市、今帰仁村)、前泊、野甫(いずれも伊平屋村)、仲田、内花(いずれも伊是名村)、奥(国頭村)、古宇利(今帰仁村)、徳仁(南城市)、渡嘉敷(渡嘉敷村)で、本島北部とその周辺離島に目立つ。
「少量漂着有り」とされる6港湾は金武湾(宜野座村、金武町、うるま市)、中城湾(うるま市、沖縄市など7市町)、塩屋(大宜味村)、水納、本部(いずれも本部町)、兼城(久米島町)、粟国(粟国村)、座間味(座間味村)、那覇(那覇市、浦添市)。
本部港は8日時点では少量漂着とされているものの、9日には軽石の影響で伊江港(伊江村)とを結ぶフェリー4便中2便が欠航した。
日帰り検診行けない妊婦も
他にも、離島便の欠航が相次いでいる。県によると、離島航路運航に支障が出た港湾は仲田港(伊是名村)、内花港(伊是名村)、運天港上運天地区(今帰仁村)、水納港(本部町)、徳仁港(南城市)。
伊是名村では、船の出向予定時刻の約30分前になると、村内各家庭に設置されたスピーカーから臨時放送が流れ、次の便が出航可能かどうかを住民にアナウンスする。
同村に住む大城あさひさん(27)は「朝の段階では出航できると言われていても状況は変わるので、実際に船が出られるかはその時にならないと分かりません。島には診療所が一つしかなく、万が一の時には心配です」と話す。
大城さんの周りでも、沖縄本島での日帰り妊婦検診に行けなくなってしまった人がいるという。さらに、離島ならではの物流問題もある。
「11月から飲食店の時短営業要請が解除されても、居酒屋に十分な材料が入ってこないので提供できないメニューもあります。スーパーにパンが入ってくる曜日が決まっていて、その日に船が欠航するとパンが手に入れられなくなってしまうので、島の人は食パンを冷凍して備えています。パンの争奪戦です」
台風時などに船が止まって物流が滞ることがあるため、物資を備えることには慣れているというが「この状況がいつまで続くのか目途が立たないことが大変です」と大城さんは話す。先週から始まった軽石の除去作業で、島民の間には「もしかすると来週あたりから通常の生活に戻るのでは」との期待感もあるというが、潮の流れで1日ごとに軽石が出たり入ったりすることもあり「またすぐに戻ってくるかもしれない」という心配が残っている。