現状把握にすら多大な労力… 部活動派遣の現場に見る課題とは

 

さまざまな局面で無数の課題

 移動先では、宿泊場所や交通手段の確保も伴う。同行する指導者がマイクロバスをレンタルすることもあるし、マイクロバスでも乗員数が足りなければ追加でレンタカーも手配することもある。そうなると指導者・引率者はもちろん1人だけでは足りず、学校の顧問や保護者に協力を頼らざるを得ない。引率者の渡航費用も当然発生するので、その負担については、チームの保護者がカンパを募ったり、学校側が一部負担したりすることもあるが、引率者自身が自腹を切ることもあるという。

 そんな中でも、サッカーは競技人口が多いこともあり「寄付も集まりやすい面はある」という。ただ、女子サッカーのようにまだチーム人数が少ない場合には、基本的に遠征費用が人数割なので、大会に出場できる人員が減ると個々の負担額が高くなってしまうことも少なくない。

「サッカーですらこんなに大変です。荷物の多い野球だったり、吹奏楽などの部活だとさらに器材運搬に関わる課題も出てきます。さらにマイナーなスポーツや個人競技になると、また違った局面の課題も出てくる。また、家庭の事情や離島という環境によって、そもそもやりたい部活を入り口の段階で諦めている子どもたちも実際にけっこうな数いると思います」と金城さんは話す。

 行政の補助については市町村ごとに違いもあり、回数も限られている。大半の移動が航空機となるため、各家庭の負担軽減には航空会社との連携も不可欠だ。

「それぞれの関係団体で担える範囲は変わると思いますが、協会とかファンドだけでなく、やはりゆくゆくは県がとりまとめて施策を講じないといけない部分もあると思っています。とりあえず、出来ることからやっていけば少しでも何かが変わっていくと思って続けられるようにしていきたいですね」

補助体制継続が最大の課題

 もう1つの助成先であるNPO法人豊見城市体育協会は、豊見城市の補助対象となっている登録メンバー外の選手、指導者・保護者らの渡航費や宿泊費への援助を行っている。

 各自治体による補助の範囲内では限られた予算での措置になるため、どうしても全員に行き渡らせることはできない。事務局の富永健太さんは「安全面での配慮からも、児童生徒だけでの派遣はありえません。これまで登録メンバー以外は、補助が受けられない中でやりくりせざるをえない状況でした」と説明する。

 そこで支援事業に名乗りを上げ、移動費や宿泊費などの半額を援助するという市の規定に準ずる形で支援に取り組んでいる。実際に保護者らともやりとりをしている事務局の沖山亜紀子さんは「これまで丸々自己負担だった分が軽減されるので、ほとんどが喜びの反応です」と手応えを語る。さらに、市の補助は限度回数が原則2回までとなっているので、派遣が3回目以降の登録メンバーへの支援も体協で行うなど、フレキシブルに調整しながら事業を進めている。

 ただ、それでも現場での課題はなお多く、支援を受けた指導者や保護者からも様々な意見や要望が上がっている。
 例えば移動費をみても、レンタカーなどの費用は補助対象に含まれるが、ガソリン・高速道路・駐車場などの諸経費は対象外で、これらが自己負担であること。派遣期間が長期化による費用増がそのまま負担増となること。さらに引率者に関しても、子どもたちが大会に集中できるよう、空港での搭乗手続きや派遣先現地でのレンタル品(テント・大型扇風機など)の設置、ユニフォームの洗濯などの多方面でサポートが必要となり、ある程度の人数確保が必要でその分の費用もかかることなど、対応措置が必要な場面は多岐に渡る。

 今後の取り組みのポイントは、支援事業が満期を迎えた後にも補助を続けられる体制を築くことができるかどうかだ。
 富永さんは「残りの事業期間の取り組みの中で、行政や地元企業にも様々な働きかけをしながら、各家庭の負担を限りなくゼロに近づけるように支えていきたいです」と展望を語る。沖山さんも地元企業の協力の重要性に言及しながら「良い関係を築いた上で、子どもたちも企業の皆さんも“ウィンウィン”になる形で資金集めをできる仕組み作りができれば、状況はより良くなっていくと思います」と話した。

■関連リンク
公益財団法人 みらいファンド沖縄
一般社団法人 沖縄県サッカー協会
特定非営利活動法人 豊見城市体育協会

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真栄城 潤一

投稿者記事一覧

1985年生まれ、那覇市出身。
元新聞記者、その前はバンドマン(ドラマー)。映画、音楽、文学、それらをひっくるめたアート、さらにそれらをひっくるめた文化を敬い畏れ、そして愛す。あらゆる分野のクリエイティブな人たちの活動や言葉を発信し、つながりを生み、沖縄の未来に貢献したい、と目論む。

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