不動産の“スタイリスト”徐々に浸透 沖縄独自のニーズとは
- 2021/10/19
- 経済
コロナ禍においても沖縄県の地価は8年連続で上昇しており勢いは止まらない。それに連動するように一軒家やマンションなどの売買も活発な中、売り出し中の物件に家具や小物を配置し、生活空間を買い手がイメージしやすくする「ホームステージング」というサービスが県内でも広がりつつある。不動産物件に“スタイリスト”が付くことで「住みたい・買いたい」を印象付け、売却価格の上昇や取引の早期成立に至ることができる。
今年4月、本部町にオープンした株式会社サマンサ・ホームステージング(東京都)沖縄出張所の田篭知沙所長に、沖縄での事業展開構想などを聞く。そこには観光立県沖縄ならではのニーズが見いだされていた。
売却までの日数が大幅短縮
家具配置などをしたまま売買広告などに掲載するため、中古物件の場合は元の持ち主が実際に生活しながらでも売りに出すことができることも魅力の一つだ。
「日本ホームステージング協会」が2020年に実施した調査によると、全国のホームステージングの実績のうち沖縄県内での事例は1.1%と、ほぼ人口比と比例しておりまだこれからの市場だともいえる。一方で東京、神奈川、千葉、埼玉の1都3県のみで全体の3分の1程度を占めるなど、関東・関西の大都市圏を中心に認知度を高めている。
田篭所長は同社の県外での実績から「売却までの日数が短縮できます。マンションなら約2分の1、戸建てなら約5分の1の日数になります」とその効果を語る。
物件の査定額も同社実績では0.5%程度上昇している。加えて、買い手に与える物件の印象が良くなるため、売買時の値下げ交渉が発生しにくくなる効果も期待されている。
沖縄の可能性 結婚式場や宿泊施設に応用も
ホームステージングは、建物内部を「魅せる」ことに重きを置いているため、写真や動画を通して買い手や借り手に訴求するサービスとも親和性が高い。
同社は、ホームステージングをした室内を3D撮影し、パソコンやスマホ、タブレットの画面上で自由に室内を歩き回るかのような内覧体験を提供するサービスなども行っている。田篭所長は「コロナ禍で外出を控えざるを得ない方、県外や海外にお住まいの方にもアピールすることができます」と話す。
これらのサービスは、住居の売買時だけにその利便性を発揮する訳ではない。観光立県でもある沖縄ならではメリットがある。それは、宿泊施設や結婚式場の紹介に使ってもらえることだ。田篭所長は「このあたりのニーズが沖縄では掘り起こせると思っています。リゾート婚がしたいけど県外に住んでいてなかなか下見に行けないという方に、チャペルだけでも事前に見てもらうなど、選択肢を事前に広げることができます」と説明する。
保育園や老人ホームなどの福祉施設、イベント会場などにもその用途を広げられる可能性が考えられ、時間と距離を越えた「人と場所」のマッチングをも後押しする。