「医療崩壊が目前」 県内最多更新の732人
- 2021/8/13
- 新型コロナ・医療
沖縄県は12日、新型コロナウイルスで過去最多となる732人の新規感染を確認したと発表した。入院調整を行うため自宅で待機していた那覇市の男性(40代)が死亡したことも明らかになった。玉城デニー知事は同日、県庁で会見し、「医療崩壊の危機が目の前に差し迫っていると言わざるを得ない」と強調した。
当初、県は前日の11日夕方に知事会見を行うとしていた。しかし、同日の会見は予定より30分遅れての開催予定となった上で、会見時間の直前に急遽中止が決定。県の方針で調整がついていない事項があったためとされるが、重要な局面でのドタバタ劇で、会見は仕切り直しとなっていた。
県内では、7月8 日に35人だった新規感染者数が、感染力の強いデルタ株への置き換わりが進んだこともあり5週間で21倍と爆発的に増加している。1人の陽性者が何人に感染させるかを示す「実効再生産数」は沖縄本島で1.52となり、前週から1.10ポイント下落したものの、引き続き1を超える感染拡大の局面にある。
12日の入院者数は、県全体で627人。退院者で空いた病床に新たな患者を受け入れるやりくりが続くが、沖縄本島での新型コロナ用病床占有率は89.5%(11日時点)で、玉城知事も「残り僅かな救急用の重症病床を除いてほぼ満床」と述べる極めて逼迫した状況が続いている。
また、高齢者へのワクチン接種が進んだことで感染者が若年齢化したものの、すでに中等症以上の入院患者数はゴールデンウイーク後の「第4波」を上回った。県は「若くても酸素投与が必要な状態まで悪化する」としており、感染のピークが見通せない中で重症者数も「第4波」に迫っている。今後は、本来は入院治療が必要な中等症患者が自宅療養となるケースが多発する可能性がある。
感染状況は全国ワースト
県は、これまでワクチン接種を「切り札」と強調してきたが、沖縄のワクチン接種率は引き続き全国最下位。11日時点で、1回目の接種率は全国が39.48%なのに対して沖縄は33.46%、2回目接種率は全国の29.94%に対して沖縄は23.38%にとどまる。
12日の会見で、県は8月末までに全住民の5割、10月末までには7割の1回目接種を完了する目標を発表した。ただ、直近の感染急拡大を抑える新たな手段は、すでに緊急事態宣言下にある中では打ち出すのが難しい現状だ。直近1週間の新規感染者数(人口10万人当たり)は、沖縄は249.31人の全国ワーストで、2番目に悪い東京(199.59人)を2割上回っている。
中部病院医師の高山義浩氏は、12日、自身のFacebookで「さらに新規陽性者が増加すれば、確実に医療逼迫します。かなり深刻な見通しです。1週間前にも書きましたが、沖縄では、『本当のパンデミックが始まろうとしている』んだと思います。病床よりも早く、救急外来が維持できなくなるかもしれません」と語った。医療崩壊が現実のものにならないよう、県と県民の行動が問われている。
(記事・写真・図 宮古毎日新聞)