県内の医療体制「これまでにない厳しい状況」

 
沖縄県庁

 新型コロナウイルスの感染拡大により、県内、特に沖縄本島で医療の逼迫が急速に進んでいる。県によると8日、沖縄本島に限った新型コロナ対応の病床占有率は、重症病床88.9%、中等症95.1%、軽症85.9%に達した。県は医療体制について「これまでになかった厳しい状況に向かっている」と分析している。

 県全体のコロナ対応病床占有率は8日時点で79.4%。逼迫はしているものの、まだ受け入れ可能なようにも思われる。しかし、この数値は宮古や八重山といった、現状で沖縄本島地区と比べると感染が抑えられている地域の病床も含み、本島地区では「ほぼ病床が埋まっている状況」という。

 感染の急拡大を受け、入院中の患者数は1カ月前の277人から8日には606人に増加した。当然、退院する患者もいるため、空いた病床に新たな患者を受け入れるやりくりが続くが、6日には沖縄本島で空き病床が2床しかない事態も発生した。

 これまで、県は沖縄本島内に開設した「入院待機ステーション」を活用し、入院が必要な患者を病床が空くまで受け入れてきた。ただ、今回の感染拡大で同ステーションを利用する感染者も増加。8日には、自宅療養にせざるを得ない中等症の患者も数人出たという。

 県は、自宅療養となった患者に対しては酸素を供給する「酸素濃縮器」を配布する。ゴールデンウイーク後の第4波時に酸素濃縮器を提供して自宅療養した事例は1件あったが、未曽有の感染拡大により、今後は同様の患者が増える可能性がある。県は、100台程度の濃縮器を用意しているという。

 現状について医療界の危機感は強く、6日に開催された医療従事者の「専門家会議」では委員から「医療崩壊という言葉を具体的に伝えて、(県民に)怖がってもらって家にこもってもらう(しかない)。目の前で起こっていることを一つ一つ具体的に説明して危機感を持ってもらわないと、この(感染の)波を止められない」との発言もあった。

 一方、専門家会議後に会見した委員は、ワクチン接種の効果で高齢者の感染が減少したため重症患者もほぼ救えているとして「(医療現場の)モチベーションは落ちていない」とも強調した。ワクチン効果で入院患者が若年化し、医療現場に変化が起きていることもうかがわせた。

 入院患者数は、新規感染者数に遅れてピークを迎える傾向にある。新たな感染者数が5日連続して500人を超える現状が続く中、入院患者数は増加を続ける可能性が高いとみられ、医療現場の正念場が続く。

(記事・写真・図 宮古毎日新聞)


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