那覇軍港問題 松本浦添市長に聞く “北側案”受け入れの背景(下)
- 2020/9/19
- 政治
8月18日、米軍那覇港湾施設(那覇軍港)の那覇港浦添ふ頭への移設を巡り、浦添市の松本哲治市長は、自らが公約で掲げる、港湾内南側を埋め立てる浦添市案を覆し、県や那覇市が推す、港湾内北側を埋め立てる案を受け入れた。松本市長にその経緯を聞く連載の第2回では、民港計画の見直しを視野に入れた戦略などを語る(連載の第1回目はこちら。https://hubokinawa.jp/archives/2025)
「知事、最初で最後のチャンスです」
松本市長は幾度となく繰り返した。「日本政府と米軍は『地元合意が形成されれば北でも南でも構わない』との立場でした」。地元合意、すなわち沖縄県・那覇市と折り合いが付けば、軍港位置を南側にずらす浦添市案が実現するかもしれなかった。
「だから3年半前に2期目の出馬をした時に『軍港を受け入れる代わりに、せめて南の端に造ることをお願いする』と表明し、当選したんです。『受け入れはやむなしだけど南側に』というのが浦添市民の民意だったはずです」
2期目の当選を果たした2017年2月に、時は戻る。
松本市長は県、那覇市との三者会談を要求し、同6月に浦添市議会は県、那覇市に早期の協議を求めて意見書を提出。それらを経て、同9月に初めての三者会談を行うことができた。非公開のその場では、翁長雄志県知事(当時)、城間幹子那覇市長がいた。松本市長は翁長知事にこう伝えたという。
「知事、最初で最後のチャンスです。浦添の民意が出ているからという理由で、浦添市案を飲んでください。キンザー跡地真っ正面にこんな軍港を造ったのはあなただと、将来にわたって言われ続けることになるんですよ。上手い落としどころは浦添市案に乗ることですよ、知事」
松本市長にはこういう思惑があった。地元自治体の選挙結果を受けて現行計画を見直すことは、沖縄の自己決定権や民意の尊重をうたう“オール沖縄”サイドである翁長知事と城間市長の理屈にも合致し、浦添市案の実現を掲げた松本市長の公約も守られ、民意の主体である浦添市民の願いも政治に反映される。全員が納得できるはずだ、と。