感染症に強い観光を形に OCVB・下地芳郎会長インタビュー
- 2021/9/22
- 経済
―沖縄観光の大きな危機の真っ只中で、OCVBはどのような役割を担うと考えていますか。
「これまでは観光政策ということで、観光地の魅力作りという点で県外・海外の誘客メインでの役割を担ってきた。しかし、コロナ禍という大きな危機の中で、観光が産業として持ち堪えられるかどうかという局面になっているので、沖縄の観光を支えるという点で観光を“守る”ための産業政策によりコミットしていかなければならなくなった。
例えば、今は宿泊事業者がコロナ対策に使った費用を最大500万円支する事業を受託している。従来ビューローにはなかった役割だったが、観光業界の自助努力ではどうにもならない現実が出てきたことに対応しなければならない。
そうした状況を受けて、県や国に対して支援策を具体的に要求していくことの役割も担っていると考えている。先日県議会で成立した『観光再興条例』を根拠に、県議会や県には困窮している事業者への経営面での支援、事業規模に応じた給付金など、経済的支援を柱に据えた事業計画を立てて実践してほしい。それが観光業界で明るいニュースになる」
感染リスク明確化で新たな旅行の形を
―今後はどんな取り組みをしていこうと考えていますか。
「現在ワクチン接種が進みPCR検査も低価格になり、ウィズコロナの時代の中で観光需要をどう掘り起こしていくかということも、沖縄県やビューローを含め観光業界に課された大きな課題だと思う。
感染対策パッケージ化の動きに関連して、世界的にも行動緩和が行われている例もある。しかし変異株の影響で、フルオープンにすると急激なリバウンドの懸念は拭えないわけで、ある程度の制限は残る。ただ、やっぱり明るい兆しであるのは間違いない。島嶼地域である沖縄観光を守るため、そして旅行を楽しむために、ワクチンを打った上で出発前のPCR検査を済ませる旅行スタイルを推奨するメッセージの発信は意義がある。
現在県に提案しているのが、連休などの人流が増えるタイミングに合わせて、ワクチン接種済もしくはPCR陰性の県外から来た人たちを対象にした実証実験的なモデル事業をやってほしいということ。対策済みの観光客の感染リスクが低いことを証明できれば、できることの可能性は広がる。新しいスタイルの沖縄旅行のモデルを確立して、次のステージに向かうための一助になるのではないか。
これまでのように『来ないでください』『やむなく来る人は検査を受けてください』だけでは限界がある。実際、来るなと言っても来ているし、来た人たちが何をしているのか、その後感染したかどうかも分からない。そんな“分からない”だらけの曖昧な取り組みを続けたままでは『観光立県』として今後十分な観光再開を展開することはできないだろう」
「また、県には美ら海水族館と首里城公園の閉館・閉園については見直してほしいと考えている。誰でもチェックなしで入れる所と、一定の管理ができる有料施設とはある程度差別化できる。例えば東京の上野動物園や都の美術館は、閉館しないで予約制・時間制で人数制限をするという取り組みをしている。コロナ禍で何をどうすればできるのかということを日々実証実験しているとも言える。一方で、『県の管理施設だから』という理由で一律に閉めるということを繰り返すと、今後のノウハウの構築ができるのかは疑問だ。できないことが増えている時期だからこそ、その中でできることの判断についてメリハリをつけないといけない。
一方で改めて強調しておきたいのは、コロナで来られない人が多数出てはいるが、沖縄観光の資源や魅力、自然、文化が損なわれているわけではないということ。先日の新たな自然遺産登録もあって、むしろ魅力は拡大している。そうしたコンテンツを生かすための情報発信も怠らず、『感染症に強い観光』を形にする取り組みをしていきたい」