本命視の石垣スーパーシティ構想 3000億円の巨額プロジェクトの行方は

 

決め手は政権との距離か

 それにしても驚くべきはプロジェクトの巨大さだ。初期のインフラ投資と誘致企業の投資をあわせて事業規模は3000億円から4000億円。年間の沖縄振興予算をもしのぐ額にのぼる。改めて言うまでもなく、スーパーシティは国の特区であり、プロジェクトだ。「県は基本的に関係なく、あえて県とは調整せずに事を進めてきた」(石垣市幹部)という。一方、県幹部は「本当に構想が実現すれば、いい意味でも悪い意味でも県の観光業にも大きな影響を与えることになるだろう」と身構える。

 石垣市の開発は、農用地区域での開発行為が避けられない。開発には県知事の許認可も必要で、もしスーパーシティに指定され、住民合意を得てプロジェクトが始動すれば、石垣市、国、県との密接な連携が求められることになる。

「来年は知事選挙もある。それを考えれば、スーパーシティの指定に政治が絡んでくることは避けられない。その時に政権と玉城県政の関係が良好であればいいのだが…。いまは予断を許さない」(県幹部)

住民は寝耳に水

 ただ、スーパーシティ構想の推進には、住民の同意、合意が必要だ。

 現職の中山市長は3期目である。石垣市は保守地盤の自治体で、本来は保守系の中山市長は盤石のはずだが、2017年にゴルフ場建設をめぐって市有地を貸し出すよう市長を脅迫したとして市議が逮捕されるなど市政が混乱した挙げ句、18年の市長選挙では保守分裂選挙となった。来年3月の市長選挙でスーパーシティ構想推進の是非が争点になった場合、選挙結果次第では、仮に国から特区に指定されても事業がすんなり進むかは不透明だ。

石垣市役所

 さらに、肝心の市民の関心がスーパーシティにほとんど向いていないことも強い懸念材料だ。ある市議は、「市議会でスーパーシティの話題が出たのは、去年6月の一般質疑の一回だけ。そのときは、スーパーシティ法案が改正されたが、どう対応するかというまさに一般的な質問だけ。市も適切に対応するといった、表面的な答弁だった。議会ではまったく議論されていない」と実情を明かす。

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