本命視の石垣スーパーシティ構想 3000億円の巨額プロジェクトの行方は
- 2021/5/16
- 政治
政府が推し進める「スーパーシティ」構想に沖縄県では唯一、石垣市が応募した。スーパーシティは、IoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)を活用して地域のビッグデータを解析し、「まるごと未来都市」を目指すものだ。先端技術を活かしてまちづくりを進めるスマートシティより、「住民目線」を前面に出したのが「スーパーシティ」の特徴だ。
去年5月に国家戦略特別区域法が改正されて、スーパーシティ特区では規制緩和を一括して行えるようになった。内閣府は全国の市町村を対象にスーパーシティ構想の提案を募集し、4月16日に締め切った。結果、31の市町村・自治体連合からの応募があった。この中から第一弾として、夏頃に5地域程度が特区に指定されることになる。
新規開発型の巨大プロジェクト
石垣市はA4版の紙に換算すれば約100ページに及ぶ提案書を4月15日にメールで内閣府に提出した。スーパーシティでは、既存のまちでデジタル化を進める「ブラウン型」と住民の住んでいない更地に新規開発を進める「グリーンフィールド型」があるが、石垣市は新石垣空港の周辺53万坪、石垣港周辺の南ぬ浜町の20万坪で大規模開発を行うグリーンフィールド型。提案書の概要にはリゾートホテルや首都圏などから移住する高齢者コミュニティー、スポーツパークを建設する計画が示され、そこではリモート診療やAI介護、デジタル通貨が普及し、配送ドローンが飛び交っている未来の都市の姿が描かれている。
この計画を主導するのは、沖縄でも大宜味村のホテル開発などに実績があるプラネット社、最大手のコンサル会社アクセンチュア、隈研吾建築都市設計事務所の共同事業体(JV)だ。去年11月、プラネット社から初めて提案を受け、石垣市は3社と構想を練り上げてきたが、「もともとある国会議員が持ち込んだ政治案件」(県庁関係者)とも言われる。
「スーパーシティの募集は形だけで、いくつかはとっくに特区の指定が決まっている。石垣市の中山義隆市長は自衛隊の受け入れにも積極的で政権とも近い。政治的な条件は整っている」と解説する関係者もいる。さらに、アクセンチュアはスーパーシティ構想のデータ連係基盤に関する調査業務を内閣府から受託していることから、「むしろ指定が決まっている案件に本命のコンサルが乗り込んできた」(別の県関係者)との説まで飛び出す。いずれにせよ、石垣市が有力候補であることは間違いなさそうだ。