土砂採掘に措置命令 「採掘禁止」は見送り
- 2021/4/17
- 社会
玉城デニー知事は16日、沖縄戦跡国定公園内にある糸満市米須での掘採届出について、自然公園法に基づき関係機関と連携して遺骨の有無を確認するなど必要な措置を取るよう求める措置命令を出す方針を発表した。一方で、採掘を全面禁止する措置は見送った。
同採掘をめぐっては、沖縄戦戦没者の遺骨が混入するおそれがあるとして、遺骨収集ボランティア「ガマフヤー」の具志堅隆松氏らが反対してきた。県議会は15日、「沖縄戦戦没者の遺骨等を含む土砂を埋め立てに使用しないよう求める意見書」を全会一致で可決している。
今回、県は採掘業者に対し、▽沖縄戦戦没者の遺骨等が混入した土砂は採取しない▽戦没者の遺骨収集に関する法律、糸満市風景づくり条例等関係法令を遵守し、必要な手続等を確実に実施する▽工事着手届出書、工事完了報告書の提出―などに留意するよう通知した。
県庁での会見で、玉城知事は遺骨が混入した土砂の工事や埋め立てへの使用は、「あってはならない」としつつ、「採掘は所有権や鉱業権に基づくが、国内で唯一の戦跡国定公園の趣旨、糸満市風景づくり計画における重要性などを考慮した結果、必要な措置を取るべき旨を命じることを判断した」と説明した。
また、「法制度上、最大限取り得る行政行為。異例ともいえる判断だ」と強調した上で、「遺骨混入の可能性のある土砂が戦没者遺族等県民の心情に配慮し適切に扱われるよう人道上の配慮を事業者に求めるとともに、県議会で議決された意見等も踏まえ、取り得る最善の措置を検討していく」とも述べた。
遺骨収集ボランティア団体は落胆
「ガマフヤー」の具志堅代表は知事の会見後、「遺族の声が反映されておらず、納得できない内容だ。せめて遺骨が出た傾斜部分の採掘を制限してほしかった」などと不満を漏らした。
さらに、「精神的な被害を受ける遺族が、何の意思表示の機会を与えられないまま県に決められてしまった。残念を通り越して憤りを感じている」とも述べた。戦争被害者の遺骨救済ができる法令の早急な整備も訴えた。
知事の会見を見守った宜野湾市の女性(70)は「法的な制限があるので、判断はとても難しいと思う。知事の気持ちは私たちと同じだと思うが、どれだけ世論の声を盛り上げていくかが大事だ」と述べた。
同じく沖縄市の女性(86)は「知事1人では大胆な決断ができない。民衆の大きなうねりが必要だ。条例や法律は省略できないので知事も大変だと思うが、躊躇なく中止命令を出すという形で、私たちに応えてほしかった」と述べた。
(記事・写真 宮古毎日新聞)