貧困問題考える「Rich Heart プロジェクト沖縄」設立 大城五月さん

 

 シングルマザーとしての子育ては大変だった。仕事から帰ると大量の洗濯物や片付け、食事の準備。「寂しい思いはさせないと思っていたのに、こんなはずじゃなかった」と体調も精神もギリギリの状態だった。さらに長男が不登校になるも、仕事が忙しくて向き合う時間がなかった。

 五月さんは、子どもとの時間を増やすために仕事の独立を決意した。当時付き合っていた男性とその年に再婚、1男を授かり、新生活が始まった。しかし、幸せは長くは続かず、金銭トラブルで離婚した。

沖縄の子どもを取り巻く環境

 沖縄県が2016年に結果公表した「子どもの貧困実態調査」で、沖縄の子どもの貧困率が全国1位の29.9%と、全国平均の約2倍、3人に1人が貧困状態にあるという深刻な結果が明らかになった。同様に、ひとり親世帯の子どもの貧困率も全国1位の58.9%と、沖縄の子どもを取り巻く環境は深刻だ。

沖縄県子ども生活福祉部子ども未来政策課資料より

 五月さんは、沖縄の子どもの貧困を取り巻く環境に、シングルマザーの世帯率全国1位(全国平均の約2倍)、1人当たりの県民所得全国最下位、10代の婚姻率全国1位、10代の出産割合全国1位(全国平均の2倍)、婚前妊娠結婚(できちゃった婚、授かり婚)率全国1位、離婚率全国1位などを挙げ、「私のような人生の人は沖縄県に多いと思う。周りを見てもシングルマザーで頑張っている人達、シングルマザーでなくても生活が厳しい人達もいる」と話す。

 「私の場合はそこから抜け出すことができたけど、貧困問題の真っ只中にいる人たちがいる。私のようにシングルマザーのもとで成長し、自分自身もシングルマザーとして子どもを育てているかもしれない。毎日の生活に苦しんでいるかもしれない。周りがみんな幸せに見えて、自分を追い詰めてしまって苦しい気持ちになるんです」

貧困問題を考えるコミュニティで経験をシェア

 五月さんは、沖縄県の貧困問題の現状を沖縄の人たちが考えるきっかけを作るために人生をかけて向き合おうと決意し、「本質的な問題がどこにあるのかというのをみんなで対談して、会話を重ねていきたい」と貧困を考えるコミュニティ「Rich Heart プロジェクト沖縄」を今年1月に設立した。

 コミュニティでは、オンラインイベントを月に1回、実施している。「貧困問題を明るく考えていきたい。未来ある子供達がやりたい事ができるように、自分の人生に誇りをもって後世に繋ぐ大人が増えるように」との思いだ。

1月に行われた座談会の様子、テーマは「朝食」(写真:Rich Heart プロジェクト沖縄)

「Rich Heart プロジェクト沖縄」
https://www.facebook.com/satsuki.okinawa2021/

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