FC琉球上里一将選手 キャプテンの重みと苦しみと

 


 シーズンが終了した翌日の12月21日、彼は名護市の21世紀の森公園ドームにいた。地元の子供たちにサッカー教室を行うためだ。前日まで熱い戦いをしていたのだから、すぐにでも休みたいだろうに・・・。

 ところが・・・「去年のオフに県内でサッカー教室を行った後、自分のSNSに<沖縄の北部でもやってほしい>というコメントが書かれていて。この1年間ずっと北部で開催したいと思っていたんですよ。実現出来て良かった」と、昨日までとは全く違う穏やかな顔で話した。

 キャプテンとして今シーズンを終えた気持ちを聞くと、「J1昇格目指してやってきたので、後半良くなってきたとはいえ、全く納得していない。」と厳しい顔に戻った。「昇格を目指そうという気持ちが本当にあるのか?本気なら練習も試合ももっと厳しく出来るだろうと。選手もチームももっとプロフェッショナルにならないといけないと言う気持ちで苦しかった」と付け加えた。

腹筋を触ってびっくりするこどもたち

 個人的にどうだったかも聞いてみた。

 「言えないことばっかりだけど・・・正直、めちゃめちゃ苦しかった。コロナで試合から離れてここまでサッカーしないことは初めてだったし、先も見えないし。でも改めて、去年の自分たちの試合映像を見直したり、国内外のサッカー映像を見て、日本人に合うサッカーはどうなのかを考えた。海外はパスのスピード、精度、ドリブル全てにおいて圧倒的に個人技が優れていて個人あってのチームだけど、それを上回るために日本人は組織でどう戦えばいいのかとかね。それに試合のない分、今まで以上にいっぱい走りこんだし身体を鍛えた。だから、今年は全試合に出られたんだと思う」。

 小野伸二選手につぐ年長、34歳のベテランの全試合出場は見事である。


 苦しい中で支えになったのは“乗り越えられる人にしか試練は与えられない”という言葉。「よくある言葉かもしれないけど、僕の尊敬する人から言われた。僕は膝の大けがをして引退を考えた時もあって、その時に言われていた。だから、今年は試練を乗り越えろって神様に言われているんだなと思って」。


 悲壮感さえ漂っていたピッチ上の姿。年齢を考えれば「J1昇格は来年でもいい」という悠長な時間はない。J1昇格は必須なのだ。

 「これは選手もそうだけど、FC琉球全で同じ方向を見ないといけないということ。もっと強い気持ちで真剣に取り組まないと。それぞれの立場でやるべきことをやって“このチームで良かった”と感じられるようにしてほしい」。

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