演者目線で“基盤”を作る フリーランスつなげる「レフトステージ」

 

 現在は新型コロナウイルス感染拡大もあり、劇場が以前よりも稼働していない。しかし、コロナ禍だからこその変化もある。
 動画配信の試みが増え、地方でも観劇できる機会が増えた。「この現状も踏まえて、配信の機材や技術スタッフが連携していける仕組みの構築ができれば、演劇の業界が継続していく新たな形を模索できる」と説明する。

 観劇する人の母数を増やしていくことも大きなテーマの1つだ。「演劇はほとんど東京や大阪だけという現状が解せないという思いがずっとある。沖縄でも公演したいという人たちは少なくない。ニッチな演劇もきちんと予算的に成立する形で沖縄に持ち込めるような土台も作っていきたい。これからは、自分が住んでいる地域をベースに考え、動いていくことも大事なテーマになってくる」

フリーのセーフティネットを

 とはいえ、コロナ禍の中、まだ稼働している劇場は少ない。そこで、「人と人とをつなぐ仕組み」というコンセプトを演劇だけでなく、音楽や芸能などエンタメ業界全体に広げ、フリーランスの俳優やミュージシャンなどの演者と、音響、照明など技術・制作スタッフとをそれぞれの需給に最適化してつなげるサービス「レゾナンス」の開発に着手。10年来の知り合いで、県内外の様々なステージの現場を知る久保田さんがチームに加わり、その経験と信条を形にしていく試みを進行中だ。
 レゾナンスでは、登録者が納期や技術、報酬などの条件を詳細に記入し、その需給が高い精度で一致した際に契約が成立する。これは雇用者、労働者の権利を保障する措置で、双方がプロフェッショナルとしてきちんとフェアに交渉をするためのスタートラインとなる。フリーが携わることも多いエンタメ業界の“慣習”として口約束なども多かった仕事の依頼が、1件1件の契約ごとに電子契約書が発行されて明示されるので、仕事内容の管理をしやすくなる。同サービスは今後、コンテンツの更新を視野に入れつつ年内にもサービスを開始する予定だという。

COOの久保田真弘さん

 「音楽家は音楽を生業とする以上、『労働者』という立場でもある。でも現状ではまだ“社会的な枠から外れている”という実感が強く、これはフリーランスのクリエイター全般にも言えることだと思う。今回のコロナ禍でも、フリーが給付金からはじかれてしまうということも実際に起きている。そうした問題点や不条理を踏まえて、業界全体を改善していくためのルール作り、セーフティネット作りをしたい」(久保田さん)

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