演者目線で“基盤”を作る フリーランスつなげる「レフトステージ」

 

 表現活動としてのアートや文化、エンタメを持続していくためには当然、利益を生まなければならないため、ある程度の「産業化」が必要になる。芸術と産業を結びつけた時、ともすれば「金儲けのためのアート」や「純粋ではない」もしくは「たかがエンタメ」などというイメージで漠然と否定的な意見を持つ人もいるかもしれない。しかし、そのような意見を持つ人も含めて、この社会でアートやエンタメをほんの少しも堪能していないという人は皆無に近い。

 久保田さんは「日本は特にアートやエンタメに関して、あまり理解があるとは言えない。そうした状況が続いてきて現在のような社会構造を形づくってしまっている。文化的なものやエンタメを享受することは人間的な豊かさにつながる。これから後の世代が、やりたいことを自由にやれる社会を形にするためにも、芸術を組み込んだ上で社会が循環するシステムの構築は不可欠だと思う」とヴィジョンを語る。

ステージの「上手」から

 社名の「レフトステージ」は演劇用語で舞台(ステージ)の位置を示す「上手」の意味。ステージに立つ人の視点で客席に向かって左側の位置のことだ。現在社員は4人で、それぞれが演劇や音楽などエンタメに携わり、現場を知るプレーヤーでもある。
 「板の上に立つ、演者側の目線をいつでも大切にしたいという気持ちを込めた」と大坪さん。会社、プレーヤーとしての目線は、これからの業界や社会を担う次世代へも向いている。「見せたい、伝えたいという表現の気持ちはあるのに、それを伝える場所がない現状がもどかしい。自分たちの事業では『場』を作り、様々な人たちが出会うことできっかが生まれ、ひいては表現も仕事もきちんと『産業』として循環していくという意味でのエコシステムを実現したい。演劇だと、“観たい”の中には一定数の“やりたい”も含まれていると思う。そういう人たちをつなげて、業界が動いていく連鎖を生み出したい」と展望を語った。

 久保田さんは「表現活動については、生き様と生業とは違う。やりたいからやる、好きだからやる、という生き様をきちんと肯定できる社会を実現することが、様々な面白いものや良いものが表現として生業になる可能性が高まると思っている」と強調する。「エンタメを、今のように見下げられた状態ではなく、きちんとステップアップさせた状態に整えて、後続につなげるための種をまいていきたい」と話した。

<株式会社レフトステージのWebサイト>

https://left-stage.jp/

Print Friendly, PDF & Email
次ページ:
1 2

3


関連記事

おすすめ記事

  1.  サッカーJ3のFC琉球が、第2次金鍾成(キン・ジョンソン)監督体制下の初陣を白星で飾った…
  2. 今季から琉球ゴールデンキングスに加入したアレックス・カーク(左から2人目)やヴィック・ローら=16…
  3.  FC琉球の監督が、また代わった。  サッカーJ3で20チーム中18位に沈む琉球は1…
  4. 戦前に首里城正殿前に設置されていたバスケットボールゴールを再現した首里高校の生徒ら=8月27日、那…
  5.  8月12日、浦添市のアイム・ユニバースてだこホール市民交流室は熱気が渦巻いていた。ステー…
宮古毎日新聞

特集記事

  1. 再びFC琉球の指揮を執ることになり、トレーニング中に選手たちに指示を送る金鍾成監督=19日、東風平…
  2. ヴィック・ロー(中央)の入団会見で記念撮影に応じる琉球ゴールデンキングスの(左から)安永淳一GM、…
  3. 沖縄県庁  沖縄県は、地域の緊張を和らげようと、4月から「地域外交室」を設置し、照屋義実副知…
ページ上部へ戻る ページ下部へ移動 ホームへ戻る 前の記事へ 次の記事へ