文化としての「食」に向き合う 棚橋俊夫さんの精進料理(1)

 

日本で最も古く、世界で最も新しい料理

 文化への向き合い方に加え、現代の食生活が日常的に肉中心になっており、野菜を軽視する傾向にあることへの憂いも大きい。「食べることへの興味や関心が欲望的になっている」。食事という行為が、自身の欲望を満たすために「欲望に支配されがちになってし まっている」と指摘しながら、「欲望はコントロールするもので、自分が『食』に何を求めるかということを考えれば、自ずと生活の仕方や考え方も変わっていくもの」と述べた。

 棚橋さんが最も力を入れいているのは、精進料理の理解者を1人でも多く増やしていく ことだ。「精進料理には底知れぬ深さと広さがあって、まだまだ可能性を秘めている」と断言する。現在は日本国内よりも、海外からの注目が集まっているという。「日本で興味を示す人は圧倒的に少なく、その辺は寂しい思いをしている。海外の人たちの方が好奇心と尊敬の念が強い」。
 こうした現状を踏まえ、料理をして食べながら学べる教育の場を設けることも模索中だ。 料理に対する反応は、味覚が主観的で好き嫌いがあり、個別に違うが「だからこそ面白い」という。棚橋さんの料理を食べた人たちが、体の内側からの反応について報告してくることも多い。コロナ禍の現在、自宅で料理する機会も増えてきているからこそ、たくさんの野菜を食べ、自然を感じながら体内を清らかにすることを実践してほしいと考えており、精進料理はその大きなヒントになると強調する。

真剣な眼差しでゴーヤーを盛り付ける

 「精進料理は日本で最も古い料理だけれど、同時に世界で最も新しい料理にもなりうる 懐の深さがある」と力を込める棚橋さん。精進料理の奥深さ、野菜の素晴らしさを広めていくことを自身の“使命”と位置付けている。

 「精進の精神を知ってもらうことが食の見直しにつながり、それは文化を継承していく意味でも我々の未来に通ずることにもなる。今後も可能性を伝え続けたい」

 棚橋さんが主宰する「是食(ぜくう)キュリナリーインスティテュート」のWebサイトはhttps://www.zecoow.com/

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