支援を1人でも多くの被害者に(1) 「沖縄被害者支援ゆいセンター」の活動

 

沖縄特有の「障壁」

 ゆいセンターでは、県内全ての事件・事故被害者の相談を引き受ける。交通事故もあれば、性暴力や殺人などの犯罪事件の被害者も相談に訪れる。同種の事件や事故であっても、相談者の精神的ダメージの受け方や被害の受け止め方は個別に違うため、一般論では解決できない側面も大きい。そのため、相談員にはある程度の経験が求められる。自身もかつて被害者だったという相談員も勤めている。池原さんは「かなりデリケートで繊細な問題に向き合わなければならないので、相談員には被害者の話をきちんと受け止められるスキルが必要。相談員が未熟だと2次被害になることもあるので、一定のキャリアがなければできない仕事だと思う」と語る。「かなり辛いことを聞いたり、理不尽なことも多いので、精神的に持たない人もいる」

 そして、被害者相談には沖縄という立地特有の「障壁」もある。「コミュニティが狭いために、誰にも相談できずに1人で抱え込む事例が多い」というのだ。特に、人口規模が小さい町村部や、市部でも近所が顔見知りだったりする地域性だと、すぐに話が広まり個人が特定されてしまうため、苦しい気持ちを飲み込んで口をつぐんでしまう人が多いという。

 「誰にも知られたくないと怯えるように相談に訪れる人も多い。家族や親しい人にも話せない、むしろ親しいからこそ話せないというケースもままある。そうした人たちの1人でも多くの人に、支援が行き渡るようにしなければならない」。県内各市町村での研修会やパネル展の企画などでも周知を図っているが、被害者支援の事業や取り組みの内容が広く社会的に知られるには至っていないのが現状だ。

糸満市で開かれたパネル展(ゆいセンター提供)
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