「本土復帰」題材に沖縄の現実描く 演劇『9人の迷える沖縄人』

 
演劇『9人の迷える沖縄人』ポスター

 1つの大きなテーブルを囲む9人の男女が、1972年の沖縄の本土復帰に際して、それぞれの立場でそれぞれの考える沖縄の現実や将来について語り出す。「おきなわ芸術文化の箱」が企画・制作した演劇『9人の迷える沖縄人 ~50 years since then~』は沖縄を拠点に活動する作家と俳優による作品だ。9月に行われた無観客公演が9月25日からオンライン配信されている。脚本を書いた安和学治さんは「復帰前後の沖縄の空気を知っている、自分たちの世代でしか表現できないことがあると思った。復帰当時から今にかけて、目の前には地続きの問題がまだまだある」と作品に込めた思いを語る。「この作品を見て、少しでも沖縄の現実を考えるきっかけになるとうれしい」

県出身製作陣ならではの表現

 「9人の迷える沖縄人」は2015年「劇艶おとな団」で初演を迎え、これまでブラッシュアップを重ねながら県内外で上演されてきた。2022年の本土復帰50年を前に、脚本の改稿と新たな演出を加えた。今年9月上旬に那覇市のアトリエ銘苅ベースで上演予定だったが、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、急遽上演を映像に収録してのオンライン配信に切り替えた。

それぞれの役を熱演する役者陣(おきなわ芸術文化の箱提供)

 劇は沖縄の本土復帰当時、有識者や主婦、戦争体験者の老婆、沖縄に移住した本土の人など計9人がそれぞれの沖縄と日本への思い、戦争、平和などへの考え方を言葉にして議論する。県出身の製作陣や俳優ならではの登場人物の機微の表現は、現在にも通ずる対立・矛盾などを浮き彫りにしていく。重くシリアスなテーマだけでなく、復帰前後当時実際にあったという様々なエピソードが笑いを交えながらリズミカルに挟まれる。

 演出を手掛けながら、劇中で沖縄に移住した本土人として出演している俳優の当山彰一さんは「稽古で、復帰のことをあまり知らない若い劇団員に当時本当にあった出来事を話したら『面白いですね』という反応が返ってきたので、そのまま採用した」と語る。劇中では、米軍基地のフェンスの下に穴を掘って基地内に入りMPに捕まった話や、復帰当日に右側通行と左側通行の道路がテレビのロボットアニメのように入れ替わる光景を期待しながら歩道橋でワクワクして見ていた、などの具体的なエピソードが披露され、劇中の「復帰当時の空気感」を立体的に演出する役割を果たしている。

出演者たち(おきなわ芸術文化の箱提供)
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