転換期の沖縄農業(下) 人手不足、規模拡大阻む

 
沖縄県内の農家数と耕地面積はともに減少している(資料写真)
沖縄県内の農家数と耕地面積はともに減少している(資料写真)

 農業版の国勢調査「農林業センサス」の2020年版で、県内の農家数と耕地面積はともに2割以上減った。JA沖縄中央会の普天間朝重会長(66)は、人手不足と耕作放棄地への対応が重要になると話す。

 「サトウキビの8割、肉用牛の7割という具合に、沖縄農業の重要な部分は離島が担っている。今の環境では、離島で担い手への農地の集約が進まないので、県全体で見ても集約が遅れている」

 普天間会長はこう語る。進学や就職を機に離島を離れても、親が農業を引退するとなったら長男が帰って跡を継ぐ。かつてはよく見られた継承のあり方は、もはや主流ではなくなっている。その結果「親が農業をやめるとなったら、沖縄本島にいる子どもが逆に親を呼び寄せる。将来の離農が見えている農家は、投資も規模拡大もできない」

 かたや、沖縄本島でも新たな道路や観光施設などの開発が続き「農地の流動化がなかなか進まない状況」。政府は農地の8割を、他産業並みの所得を確保し得る「効率的かつ安定的な農業経営」である担い手に集約すると掲げるが、県内の集積率は21年度に25.1%にすぎない。

 8割を達成するには多くの課題を抱えており、特に離島では担い手を定着しやすくする環境整備が必要という。

JA沖縄中央会の普天間朝重会長
JA沖縄中央会の普天間朝重会長

「人材が確保できるかどうかで、農家は規模を拡大したり縮小したりする。特に、外国人などの人材をどんどん入れないと、規模拡大も限界に達していると思う」

 中央会は人手不足を補うべく、ベトナムやインドネシアから特定技能外国人を受け入れ、労働力を必要とする農家に約150人を派遣している。インドネシアから、大学生約30人をインターンシップとして受け入れてもいる。

 「ベトナムは国内の景気が良くなり、日本に働きに来なくなる兆候がすでに現れている。外国人が働く先を選ぶ基準は賃金水準なので、これからは国や産地の間で賃上げ合戦になっていくはずだ。人を確保するためには賃金を上げるしかなく、農家の負担感は増すだろう」とみる。

耕作放棄地でサトウキビを

 基幹作物であるサトウキビは、製糖工場が建て替え時期を迎えており、生産の維持、拡大が必要という。ただし「規模の小さいサトウキビ専作経営では、後継者が見つかりにくい」ことが課題となっている。

 普天間会長が好機と捉えているのは、各地の農業委員会が今後2年のうちに、地域農業の将来のあり方を示す「目標地図」を作ること。「地域内の耕作放棄地をどうするかという問題が出てくる。JAグループとしては、耕作放棄地で基本的にサトウキビを作りたい」と意気込む。

 担い手としては、後継者や新規参入者の育成、自社の農業経営だけでなく作業受託も引き受ける法人などの参入を思い描く。

 JAおきなわが合併で生まれて21年が経った。「県で単一JAになってから『必要なものを必要なところに必要なだけ作る』を合言葉にやってきた」と振り返る。合併後、地区ごとに営農振興センターを設け、分野や作物ごとに専門知識を持つ営農指導員を育ててきた。「センターに指導員を集めて農家に出向く方が専門性も高まるし、効率も良い」と強調した。

(聞き手・山口亮子)

(記事・写真 宮古毎日新聞)

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