「沖縄にスタジアムは絶対必要」Jリーグ30周年 野々村チェアマン・来沖インタビュー
- 2023/8/16
- エンタメ・スポーツ
“ピーク”を作るための「秋春制」移行案 沖縄キャンプへの影響は…
ー世界との競争とは、競技レベルとビジネス面のどちらを重視しているのか。
「両方です。まずサッカーの水準を向上させないといけないという意味で、今はシーズンの時期をどうするかという議論(「秋春制」移行案)をしています。沖縄は特に暑いと思いますが、夏場の日本における6~9月の選手のパフォーマンスはとても下がってるんです。それはデータにも出ていて、走行距離、強度、スプリント、パスの数とか、全てにおいてです」
「今のJリーグのシーズン期間だと、開幕してからシーズンの半ばにかけてパフォーマンスがどんどん落ちていき、終盤にちょっと上がって終わってしまう。上部分のピークがないんです。一方で(秋春制を採用しているリーグが多い)世界トップクラスのリーグがどうなっているかというと、開幕時点の状態が一番低くて、シーズンの半ばに向けてだんだんパフォーマンスが上がっていって、最後に疲れて落ちていくんです。真ん中に山ができ、ピークの時期がプレー強度の最も高い良いゲームとなります。そういうシーズンを繰り返すから、彼らは強くなっていくんだと思います」
ー冬場の降雪地域での試合、沖縄キャンプへの影響については。
「いいサッカーを見せなきゃいけない選手にとって、Jリーグがそういう機会になっていたのか、そして世界との競争に勝てるような選手を育てる場にできていたのかを考えないといけない。まだシーズン期間が実際に変わるかは分からないですが、6~7月をオフにして、8月ごろに開幕した方が、シーズン中にパフォーマンスのピークが生まれる山は作れると思います。ただ日本には降雪地域の問題もあるので、1月は休みにする。その期間、沖縄では今までと同じように各チームがキャンプを張るということにもなるのではないでしょうか」
いかにいい“週末の作品”を作れるか重要
ービジネス面での展望は。
「日本人選手の力を上げてJリーグのレベルを上げていかないと能力の高い選手は来ないので、まずはフットボールファーストで考える方がいいと思います。その上でビジネス的にさらに伸びていくためには、国内にいろんなエンターテインメントがある中で、60のクラブが各地域でもっと圧倒的な存在になっていくことが必要です。そこから世界と戦えるようなトップクラブが出てくると、次は外貨をどう獲得するかというところにもつながっていく。60クラブを輝かせることと、ナショナルコンテンツになるようなクラブを作るという二つのテーマを持って進めていきたいです」
ー沖縄では野球やバスケットボールの熱が強いが、FC琉球がさらに人気を伸ばすためには何が必要か。
「サッカークラブは地域の人でつくるものだと思います。サッカー、バスケ、野球、ショッピングなど、エンターテインメントのショーウィンドウに上げる前に、強かろうが弱かろうが、チームに関わると楽しいと思う人がどれだけ集まるかが大事です。普段から『自分たちがあのチームを作ってるんだ』とか『自分たちが勝たせたんだ』と思ってもらえるクラブになることです。そういうサッカーの楽しみ方をどれだけ伝えられるかがポイントです」
ー確かにJ2、J3でも集客力の高いチームは存在する。
「サッカーの試合はクラブ、サポーター、選手が一緒に作った週末の良い“作品”をファンの人が見に来る。そして『そこにいて楽しい』『あの中に入りたい』と思ったファンの人が、今度はサポーターに変わっていく。つまり、ファンの人にいかにいい作品を見せられるかが重要なんです。そのためには、小さなものでもいいから、満員感のあるサッカー専用スタジアムがサポーターの熱気で溢れてるという状況をつくることが一番いいと思います」
ー沖縄ではスタジアム計画が進んでいない。
「例えば5,000人が集まったとして、その中にいる一人の観客からすると、他の4,999人は見る対象になりますが、それが美しく見えるかどうかはスタジアムと陸上競技場では全然違います。陸上競技場で15,000人を集めたとしても、観客席がバラバラなところに設置されていたら、その人に熱量も伝わりにくいですよね。でもサッカースタジアムはピッチを囲むように客席があり、サッカー観戦専用