沖縄県の住宅地、商業地とも上昇率拡大 2023年地価公示

 

 国土交通省は22日、今年1月1日の地価公示を発表した。県内の地価は、前年から平均で住宅地が3.6%、商業地は2.7%、工業地は14.1%、それぞれ上昇した。工業地では前年から伸び率が縮小したものの、住宅地と商業地では観光需要の回復などが影響して伸び率を拡大した。

 県内では2012年以降、入域観光客数が順調に伸びて、19年には過去最多の1016万人を記録。その後、新型コロナウイルスの影響で20年は約374万人、21年には約302万人まで減少したが、22年は約570万人まで回復した。昨年10~12月には、国内客がコロナ禍前を上回っている。

 地価公示で伸び率が全国で最も高かったのは、住宅地は北海道(前年比7.6%上昇)、商業地は福岡県(同5.3%上昇)。東京、大阪、名古屋の「三大都市圏」の平均は前年比で住宅地が1.7%、商業地では2.9%上昇した。

 また、札幌市、仙台市、広島市、福岡市の「地方四市」平均では、住宅地(前年比8.6%上昇)、商業地(同8.1%上昇)とも、沖縄よりも高い伸びを示した。一方で、地方四市以外の「その他地方圏」では、住宅地、商業地とも、沖縄より伸び率が低かった。

 県内の住宅地について、地価公示分科会の仲本徹代表幹事は「コロナ禍が収まれば、再び住宅市場が上向くという期待感は強く、分譲市場における県外業者の参入も多く見られる」と分析する。

 一方で、「燃料費や資材価格の高騰、人手不足による企業業績回復遅れのほか、ウクライナ侵攻に端を発した物価上昇による実質賃金の下落など、景気回復の足かせとなる要因も指摘されており、住宅地需要の回復も時間がかかるとの懸念がある」とも指摘した。

上昇率の市町村別トップ、住宅地は石垣市

 市町村別で住宅地の上昇率が最も高かったのは、観光産業における業績回復の期待感から住宅取得意欲が高まっている石垣市の前年比13.4%。2位は宮古島市の7.7%で、宮古・八重山地区が上位を占めた。次いで、3位は北中城村、4位宜野湾市、5位西原町で、3~5位は沖縄本島中部地区の市町村となった。

 商業地については、仲本代表幹事は「ホテル稼働率の上昇により、投資需要の回復傾向が見られた。基幹産業となる観光産業が振るわず、売買市場における引き合いを弱める結果となり微増だった昨年に対して、商業地需要の回復示す地価の上昇となった」と分析している。

 市町村別では、与那原バイパスが開通した影響により、西原町が前年比6.0%上昇で県内トップ。次いで、2位は与那原町(前年比4.7%上昇)となった。続いて、石垣市、浦添市、沖縄市の順となった。

県内最高価格、商業地3年ぶりの上昇

 県内の商業地最高価格は22年連続の「那覇市久茂地3丁目1番1」で、価格は前年比2.1%上昇の1平方メートル当たり197万円。同地点は、2020年の同41.4%上昇という大幅な伸びから、21年は同1.5%下落に転じていた。今回は3年ぶりの上昇となった。

 住宅地最高価格は、「那覇市おもろまち3丁目6番11」(1平方メートル当たり38万7000円)で、前年から1.3%上昇した。同地点は、20年の同9.7%上昇から21年には同0.8%の下落に転じ、その後は横ばいとなっていた。

工業地、引き続き上昇率全国1位

 工業地の県内平均は前年比14.1%上昇で、昨年の18.2%上昇から上げ幅を縮小させたものの、引き続き全国1位となった。地価公示分科会では「県内は十分な広さを確保できる工業地が少なく、需要超過が続いている。特に那覇空港や那覇港へのアクセスに優れた沖縄本島西海岸の需要は強い」と分析している。

 一方で、同分科会は「新型コロナの状況にかかわらず地価上昇が続いてきた中で、那覇市港町や豊見城市豊崎の頭打ち感から全体として上昇率は縮小した」と指摘した。

(記事・写真・図 宮古毎日新聞)

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