EASLで才能の片鱗を見せたカール・タマヨ ”2冠”狙うキングスの「最後のピース」に

 

母国の応援に力 「3ビッグ」での出場も視野

試合終了後、チームメートとハイタッチするタマヨ

 EASLはフィリピンのクラブも2チーム出場していたため、フィリピンからの来場客も多く見られた。コートに入る度にキングスファンも含めて会場が湧き、フィリピンの国旗を掲げた母国のファンから「タマヨ、タマヨ」とのコールも起こり、人気の高さをうかがわせた。

 能力は一流でも、学生生活を終えたばかりですぐに海外でプレーする道を選んだ自身にとっても母国の声援は力になったようだ。4日の試合後には「フィリピンの人たちが沖縄まで来てくれたおかげで、多くのエネルギーをもらい、頑張ることができました。まるでホーム(フィリピン)にいるように感じることができました。『同胞たち、私も頑張っています』と伝えたいです」と話し、まだあどけなさの残る顔に満面の笑みを浮かべた。

 プレー面でも「ホームコートでプレーし、外のシュートも入ったので自信になりました」と好感触を語った。4日の試合は15分3秒出場して13得点、2リバウンド、1ブロックを記録し、桶谷大HCも以下のように高く評価した。

 「今日のパフォーマンスを見る限り、レギュラーシーズンではビッグマンのローテーションに入るくらいの活躍をしてくれました。やっぱり彼が入るとスペースを広げられるので、他のビッグマンもガード陣もゴールにアタックできる。対戦相手が3ビッグの時に、こちらもサイズアップするために3番(スモールフォワード)で出る可能性も出てくると思います」

 Bリーグでは、アジア特別枠選手は外国籍選手2人と同時にコートに出ることができる。タマヨは内外でプレーができるため、自身を含めて3人のビッグマンが一緒にプレーする「3ビッグ」の一角として出場するタイミングも出てきそうだ。

ハンドラーの牧 新たなオプションに「楽しみ」

キングスの新たな戦力として期待されるタマヨ(左から2人目)と渡邉飛勇(同3人目)

 今回のEASLではタマヨに加え、ケガによる3度の手術とリハビリを乗り越えて2月にようやくプロデビューを果たした渡邉飛勇も多くのプレータイムを得た。身長207cmで高いジャンプ力を備え、リバウンドとブロックが武器。ゴールに向けてアタックする速さもあるため、復帰直後に日本代表に選出されるほど能力が高い。

 Bリーグのレギュラーシーズンが終盤戦に差し掛かる中、さらに戦力に厚みが増し、戦い方の幅が広がってきたキングス。今季途中にケガから復帰し、ゲームコントロールの役割を担う牧隼利は、さまざまなオプションが増えることが「おもしろい」と言う。その理由はこうだ。

 「これまでいたビッグマンのジョシュ・ダンカン、ダーラム、ジャック・クーリーは比較的強いタイプですけど、タマヨと飛勇は走る選手なので、展開が速くなる時間もあると思います。タマヨはピック&ポップでスリーポイントが打てる選手で、飛勇はゴールにダイブするのが速い。新たなオプションとして2人をどれだけ生かせるかで、自分たちハンドラー(ボールを持ってオフェンスをつくる役割)の力量が問われてくると思います」

今シーズンはゲームコントールの面で存在感が際立つ牧隼利

 2人の台頭はチームに「高さ」という武器も加えるが、それに頼り過ぎると、相手からすると的が絞りやすくなって守りやすくなるリスクもある。そのため、ボールシェアを掲げてチームで攻めるキングスのバスケを貫きたいという思いも強い。牧が続ける。

 「自分たちがやってきたバスケにプライドを持ってやり続けたいですし、その中に彼らをどれだけフィットさせられるかもペリメーター陣(アウトサイドの選手)の力量次第だと思います。今まで通りのバスケにうまく順応させることが大切だと感じます」

 選手層が厚くなるのはプラスだが、個人能力の高い選手が集まれば強くなるという単純な”足し算”では測れないのがバスケの難しい部分でもあり、おもしろい部分でもある。間近に迫る天皇杯決勝という大一番を経て、レギュラーシーズン終盤、そしてBリーグ年間王者を決めるチャンピオンシップへと進んでいく過程でキングスがどのような変化を遂げていくのか。注目したい。

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長嶺 真輝

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ながみね・まき。沖縄拠点のスポーツライター、フリーランス記者。
2022年3月まで沖縄地元紙で10年間、新聞記者を経験。
Bリーグ琉球ゴールデンキングスや東京五輪を担当。金融や農林水産、市町村の地域話題も取材。

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