ノーベル賞教授が1時間の会見で語ったコト OIST客員教授のスバンテ・ペーボ氏

 

露のウクライナ侵攻「悲劇的なこと」

HUB沖縄などのインタビューに応じるスバンテ・ペーボ氏=4月20日、恩納村の沖縄科学技術大学院大学(長嶺真輝撮影)

 ペーボ氏はロシアによるウクライナ侵攻についても言及。デニソワ人の骨片を発見したのはロシアのデニソワ洞窟であり、現地の研究者と共同で研究を行っていた。

 現在は「彼らとの協力はレベルが大変低くなっている」とした上で「今世界で起きている紛争の状況は大変悲劇的なことだと思います。この政治的な状況が変わり、実り多い共同研究を将来的に続けることができるようになればと期待しています」と話した。

 基礎研究を支える仕組みをどう構築すべきかという質問に対しては、こう答えた。

 「基礎研究は長期的なサポートを得ることが重要ではあるけれども、ただそれはどの分野であるかによって変わってくると思います。例えば私たちの研究は規模の小さな研究なので、期待できる研究者を見出して、その人たちを長期的に支援していくことが重要です。一方で物理学や天文学などの分野では、もっと国際的な規模の大きなコンソーシアムが必要となります」

グルース学長「OISTの能力示した」

会見で挨拶を述べるOISTのピーター・グルース学長=9月4日、沖縄県恩納村のOIST(ZOOMのオンライン画像より)

 記者会見には、OISTのピーター・グルース学長も同席した。

 ペーボ氏の快挙が、沖縄振興を目的の一つに掲げるOISTに与えた影響について問われ、「まず、第一にOISTがペーボ先生のような方をお招きできる能力があることを示したと思います」と回答。「ペーボ先生の研究そのものが直接沖縄に影響するものではありませんが、非常に多くの間接的な影響があります」と説明した。

 OISTの知的財産を活用した企業のスタートアップを後押ししていることを紹介し、「沖縄の未来はハイテクのスタートアップに投資するところから始まると思います。そのためには、ペーボ先生のような優秀な頭脳が必要です。そして、民間の資金で賄うイノベーションパークをつくっていきたい。これがあることで、沖縄の人々の収入を押し上げることにもなります」と今後を展望した。

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長嶺 真輝

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ながみね・まき。沖縄拠点のスポーツライター、フリーランス記者。
2022年3月まで沖縄地元紙で10年間、新聞記者を経験。
Bリーグ琉球ゴールデンキングスや東京五輪を担当。金融や農林水産、市町村の地域話題も取材。

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