組織や個人の伴走者「ファシリテーター」ってどんな仕事?
- 2020/9/4
- 経済
基本は忌憚なく話し合える環境作り
参加者が円形になって全員の顔が見えるようにすることで、フラットに話し合える状況を作るなど、少しの工夫で会議の場は様変わりするという。
忌憚なく意見を出し合うためには、こんな工夫もある。付箋紙だ。
新人や若年者など、堂々と意見を表明しづらいであろう人の声も吸い上げるため、参加者全員に付箋紙へ意見やアイデアを書いてもらうことで、誰の意見でもほぼ平等に議論のテーブルに乗せることができる。
「話をしている本人でさえ、この内容が『意見』なのか『事実』なのか分からなくなっている時があります」
そんな状態を打開するために必要なのが、イエスかノーかで答えられる問い(クローズド・クエスチョン)と、「なぜ」「何を」「いつ」「どのように」など相手が自由に答えられる問い(オープン・クエスチョン)を適切に重ねて、相手を導いていく“問いかけ術”だ。
「一緒に(参加者の)頭の中を整理整頓していきます」と北村さん。
どのような課題があって、どのような対策だったらすぐに取り組めそうなのかなど“さまざまな対話の場づくりの手法”(ホール・システム・アプローチ)を活用して具体的に浮彫りにしていく。
主体的に考え行動する「自責思考」を
北村さんは一貫する。「他責思考」を、主体的に考え行動する「自責思考」にシフトさせることこそ本当の意味の助けになる、と。
それは、自身が「自発的になった人々が地域を変えた」という現場を見てきた実体験に裏打ちされている。ファシリテーターとして独立する前、沖縄県糸満市のある集落で地域おこしに関わっていた時だ。
住民たちは地域に改善すべき点があることは漠然と分かっている。けれども特に誰かが対策に動く訳ではなかった。聞こえるのは愚痴ばかりだった。
北村さんが企画立案を行い、課題の整理を重ねていった。「その時はファシリテーションなんて意識はありませんでしたけどね」
集落内の川には市内外から人が集まり、ポイ捨てや違法駐車、安全対策などが問題となっていることが浮き彫りになってきた。地域の人々は、子どもたちも巻き込んでこのような看板を作り、設置した。
「飛び込みはやめよう」「石、カン、ビンを投げ入れない」「ゴミは各自で持ち帰ろう」
こうやって主体的な行動を起こし、成果を出したことで「自責思考」を育んでいった人々は、積極的に地域にかかわりを持つようになった結果、翌年には公民館で野菜市や祭りを開催するに至っていた。
集落は県から「人々の営みが感じられる農山漁村、地域の特色が反映され調和の取れている集落」と認められ、2015年度の「『沖縄、ふるさと百選』集落部門」に選ばれた。
「あんだけ愚痴ばっかり言っていたのに『自分たちでなんとかしよう』って動き始めたんですよ。こうやってみなさんが一体感を持ってもらえて、そのプロセスに関われたのが、本当に面白かったです。グッと来ました。最高じゃないですか」
ファシリテーション的なアプローチが功を奏した。