沖縄の和牛ブランド”山城牛”が苦境 「息子に継がせていいのか…」

 

コロナ禍で単価の下落も

A5ランクの和牛(イメージ写真)

 県内のブランド和牛の先駆けとして最高等級のA5ランクや、続くA4ランクの和牛を多く生産し、県内外で高い知名度を誇るまでになった山城牛。昨年11月の沖縄県家畜共進会では、後継者となる息子の力也さん(29)が一から育てた牛が枝肉部門で優秀1席から3席までを独占するなど、将来に向けて明るい材料もあった。

 しかし、コロナ禍で飲食店やホテルが休業に追い込まれたり、観光客が激減したりして高級和牛を扱う店が減少。そのため「売り先が減ったから、希望の価格よりキロ単価の価格が下がってしまっている」と窮状を明かす。

 一度でも価格帯を落とせばブランド力が下がるため、危機感は強い。

「農家に利益出る」価格設定を

山城畜産の肥育牛

 出荷する牛のサイズを従来より大きくしたり、肥育期間を短くして出荷頭数を増やすなどさまざまな経営努力を重ねてきたが、状況は悪くなるばかりだ。販売店では生産コストの上昇分が適正に価格に反映されているとは言い難く、農家の安定的な生産を支える市場の仕組みができていないため「息子たちの世代に繋いでいけない」と嘆く。

 今、畜産農家を支えるためにはどのような取り組みが必要なのか。その問いに、山城さんはこう即答した。

 「餌が高騰する以前から言っているけど、基金による補填とかがなくても、ちゃんと農家に利益が出る価格設定で売ってもらわないといけない。これだけ経費がかかってるんだから、これだけの値段で買ってくださいと。そうじゃないと、本当に沖縄の和牛がなくなっていってしまう。補填だけでは継続性がなく、絶対に農家は続かない」

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長嶺 真輝

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ながみね・まき。沖縄拠点のスポーツライター、フリーランス記者。
2022年3月まで沖縄地元紙で10年間、新聞記者を経験。
Bリーグ琉球ゴールデンキングスや東京五輪を担当。金融や農林水産、市町村の地域話題も取材。

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