沖縄の和牛ブランド”山城牛”が苦境 「息子に継がせていいのか…」

 
餌をあげながら経営状況を説明する山城善市さん=7月、沖縄県うるま市の山城畜産

 「和牛農家を続けられるのか、息子に継がせていいのか、自問自答する毎日です…」

 7月7日、豊見城市の沖縄空手会館。沖縄県内の畜産農家ら約250人が集い、開かれた畜産経営危機突破生産者大会。生産者を代表して登壇した、沖縄のブランド牛「山城牛」を生産する山城畜産(うるま市)を経営する山城善市さん(56)が現在の苦境を切実に語った。コロナ禍の人流抑制による消費の減少に加え、ウクライナ危機や為替相場の円安による飼料価格の高騰が追い打ちをかける。畜舎を訪ね、話を聞いた。

飼料代が年間1千万円増 赤字確定

 昨年の上旬は1トン当たり6万円台半ばだった配合飼料価格(工場渡し、全畜種平均)はこの1年半ほどで急騰し、今春に8万円台を突破。さらに全国農業協同組合連合会(JA全農)が四半期ごとに改定する供給価格で、今年7~9月期は4~6期と比べて1トン当たり11,400円の増となり、過去最高の引き上げ幅を記録した。価格は既に9万円台を超えていると見られる。

 上昇分を基金で一部補填する国の配合飼料価格安定制度はあるものの、価格が高止まりすれば補填額は下がる。さらに輸入の牧草飼料も価格が上昇しており、肥育牛約250頭を飼育する山城さんの畜舎では2年前に比べて年間の飼料代が約1,000万円も上がったという。

畜産経営危機突破生産者大会で苦しい現状を訴える山城さん=7月、沖縄県豊見城市の沖縄空手会館

 「昨今のコロナ禍の状況でも明けない夜はないと信じ、家族で取り組んできました。しかし、今年に入ってあらゆるものが高騰し、特に飼料価格の高騰は大きな負担になっています。今年はもう採算割れすることは確実です」と苦境を訴える。

 父・善行さんの後を継ぎ、2代目として従事し、33年。これまでも家畜伝染病が流行したり、子牛や枝肉の価格が上下したりするなどさまざまな困難があったが、なんとか乗り越えてきた。しかし、現状は「餌の高騰がこんなに長引き、こんなに上がるとは思わなかった」と想定外の事態に肩を落とす。

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