飼料高騰で沖縄養鶏農家が苦境 鶏卵価格上昇も追い付かず

 

取引価格上昇も「余裕なし」

見奈須フーズが生産する卵。右のゆで卵や温泉卵は自ら商品化して販売している

 一方、生産コストの急激な上昇に伴い、国内卸最大手「JA全農たまご」は今年4月、「現在の情勢では持続的な生産・製造が困難な状況となっております」として、およそ14年ぶりに出荷価格の引き上げを発表。沖縄の相場価格の参考になる福岡県のMサイズ(1キロ当たり)は今年1月時点で144円だったが、4月には211円まで上がった。

 5月は216円、6月は210円と続き、2017〜21年の5年間における平均価格183円を上回っている。沖縄の相場はこの価格に輸送費などを加味して決まる。

 それでも宮城組合長は「取引価格は上がってるけど、今の価格でも厳しい」と話す。卵を詰めるパックなど、様々な資材も値上がりしている。「いろんなものが高騰してる中で、施設の維持費や銀行からの借入の返済というランニングコストもあります。余裕はないね」

消費者、小売店の理解醸成を

敷地前の通り沿いに設置する卵の自販機。自社で直売しており、近隣住民を中心に好評を得ている

 県養鶏農業協同組合は今月、JAおきなわや県酪農農業協同組合などと共に、県や県選出の自民党国会議員らに飼料価格上昇分の緊急支援措置を要請。沖縄は地理的に県外と比べ不利性があることから、さらなる経営支援策を講じることも求めた。

 コロナ禍で県の財政が厳しいことは理解している。それでも「声を上げないと『養鶏は大丈夫』と思われてしまう」と複雑な表情を見せる宮城組合長。「長い目で見て、農家が助かる事業があるといいと思います」と、鶏が感染症にかかることを防ぐワクチン接種への補助なども提案する。

 数十年にわたり価格の変動が少なく、「物価の優等生」と言われる卵。生活必需品の一つであるため、小売店は価格を上げることに慎重にならざるを得ず、生産コストの上昇分を価格に転嫁することは容易ではない。しかし今後も飼料、資材費の高騰で農家の苦境はさらに増す可能性が高い。宮城組合長は価格転嫁について「今、農家が大変厳しい状況にあります。消費者、スーパーの理解を深めてもらう取り組みも必要だと感じます」と切実に語った。

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長嶺 真輝

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ながみね・まき。沖縄拠点のスポーツライター、フリーランス記者。
2022年3月まで沖縄地元紙で10年間、新聞記者を経験。
Bリーグ琉球ゴールデンキングスや東京五輪を担当。金融や農林水産、市町村の地域話題も取材。

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