波照間島産の黒糖ラムが完成 瑞穂酒造のフロンティアスピリッツが熱い

 

23年に8島完結 製糖技術導入から400年

 島の風土や生産方法の違いから生まれる黒糖の個性を引き出す「シングルアイランドシリーズ」は、伊江、粟国、多良間、西表、小浜の5島を残す。今後さらに商品の質を高めていくため、琉球大学農学部の平良東紀教授と連携し、風味をより向上させる発酵方法の研究も並行して進めている。

 来年の2023年は琉球王朝時代に役人だった儀間真常氏が中国から沖縄に製糖技術を導入してから400年の節目となるため、仲里室長は「今後は2カ月に1アイテムのペースで商品化を進め、23年に8島をコンプリートしたい。急ピッチで開発を進めています」と商品のブランディングを念頭に今後を展望する。

 ワンラムプロジェクトでは、その他に2種類のシリーズを展開する。

 「ブレンデッドアイランドシリーズ」は8島のラムが完成した後に開発に着手する。個性豊かな8種のラムをブレンドし、調和や多様性を感じられる至高の一品を開発する。こちらも23年中に第1弾をリリース予定。限定商品ではなく、常時販売できる体制を整える。仲里室長は「国内はほぼ外国産ラムの独占状態だが、そこに風穴を開けたい」と日本市場に割って入る構えだ。

沖縄本島にある瑞穂酒造の自社サトウキビ農場「ONE RUM FARM(ワンラムファーム)」

 最後の1つは、サトウキビの搾り汁を使用した「アグリコールラム」を開発する「ワンアイランドシリーズ」。絞り汁は劣化が早いため、蒸留所の近くでキビを生産する必要がある。瑞穂酒造は沖縄本島に農地を借り、自社で栽培を始めている。

 21年2月に初めて植え付けし、22年3月下旬から4月上旬にかけて収穫を行った。3品種ごとに刈り入れし、収穫量は合計で4.4トン。今後品種間の成分差などを研究し、ラムづくりに適した品種や栽培方法を模索していく。

ラム酒「入口」に泡盛を世界へ

 ジン、ウオッカ、テキーラと並び、世界4大スピリッツに名を連ねるラム。世界的に認知度の高い酒を、創業170年余りの伝統を誇る泡盛酒造所の瑞穂酒造がなぜ開発に取り組むのか。そして、沖縄でつくる意味とは何か。

会見で挨拶する瑞穂酒造の玉那覇美佐子社長

 玉那覇社長は「ラムとなれば、世界に対して説明がいらない」と前置きした上で、ワンラムプロジェクトにおける大きな目的の1つをこう説明した。

 「泡盛の出荷は毎年減少している状況もありますが、ラムづくりにも応用できる製造技術は非常に価値の高いものです。ラムを入口にして、泡盛も一緒に世界へ発信できるという期待を持っていますので、両方の製造に情熱を注いでいきたいです」

 ラムの開発が、長い目で見れば沖縄という小さな島の地場の酒である泡盛の普及にも繋がると見る。先人から受け継いだフロンティアスピリッツを胸に、壮大なプロジェクトに挑み続ける。

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長嶺 真輝

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ながみね・まき。沖縄拠点のスポーツライター、フリーランス記者。
2022年3月まで沖縄地元紙で10年間、新聞記者を経験。
Bリーグ琉球ゴールデンキングスや東京五輪を担当。金融や農林水産、市町村の地域話題も取材。

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