沖縄で木造住宅は無理? ”神話”も今や昔 2年前に戸建てでRC逆転
- 2022/4/18
- 経済
「沖縄で木造住宅は無理だ」ー。沖縄で家を建てようとしたら、親戚や友人からそんな言葉を掛けられたことがある人も多いのではないだろうか。実際、県外の新築戸建て住宅は9割近くが木造なのに対し、県内では鉄筋コンクリート造(RC)が長らく主流を担ってきた。
背景には、木造が亜熱帯地域ならではのシロアリ被害や常襲的な台風に対する耐性が弱いと認識されてきたことがある。しかし、そんな”神話”も今や昔。2年前に年間の構造別戸建て着工戸数で木造がRCを逆転し、トップに立った。業界で何が起きているのかー。
米統治下でコンクリート造普及
沖縄にコンクリート造が広く普及したのは、戦後の米軍統治下にあった時代。
以前は県外と同様に木造が主流だったが、1945年の沖縄戦で山野が焼かれ、建築用木材の入手が困難になった。さらに多くの住居も消失し、人々が住宅難に陥っていたため、米軍が米国からの輸入材を持ち込んで応急的に住宅を供給した。
しかし仮設的な構造だったため、度重なる台風で甚大な被害を受け、さらに材料となった米松(ベイマツ)がシロアリに弱く、住民から不評を買った。
ただ戦後の1958年まで沖縄の法定通貨となったB円(米軍発行の軍票)体制下では、1ドル=120B円というB円高で日本から安値でスギ材を調達できたため、木造住宅も多く建築された。
それでもスギ材の高騰や県内でのセメント工場の操業などでコンクリートとの価格差が縮小すると、台風に対する耐性を求めるニーズも相まって、コンクリート造が住宅の多くを占めるようになっていった。
戸建て4割以上が木造、構造別トップに
「60代以上の戦後直後の世代の方は、良くない構造で家が倒れたりした経験があるから、木造住宅に悪いイメージがある。でも、今住宅を建てるメインの世代の30代くらいの方達にとっては木造は当たり前。もう悪いイメージは無いと思う」
県内住宅メーカーで設計を担当する男性は、日々顧客と接する中での感覚をそう話す。指摘を裏付けるように、近年木造の戸建て住宅が急増している。
2000年代初頭まで県内の年間戸建て着工戸数において構造別で1割にも満たなかったが、少しずつ割合を増やし、11年には13.9%(412戸)を占めるようになった。その後も15年は21.2%(631戸)、18年は千戸を越えて38.0%(1166戸)とほぼ右肩上がりで上昇。そして、ついに20年に44.0%(1468戸)に達し、39.8%(1326戸)だったRCを逆転した。直近の21年も44.2%(1673戸)となり、RCの41.0%(1550戸)を上回った。
鉄骨造やコンクリートブロック造も毎年数百戸の需要があるが、木造の伸びが際立つ。