【復帰50年】沖縄最北端で感じる「復帰闘争」

 
復帰への願いを込めて行われた海上集会(沖縄県公文書館所蔵)

 それでも両島の人々は互いに沖縄の本土復帰を願い、運動を継続した。沖縄・奄美が日本から切り離されることになる「サンフランシスコ講和条約」が発効された4月28日には、国境に一番近い辺戸岬までデモ行進を行い、辺戸・与論双方の岬でかがり火を燃やして勇気付け合った。双方で船を出し、当時の国境付近(北緯27度線)で海上集会を行った。

 この歴史こそ、辺戸岬に祖国復帰闘争碑が建つ所以なのだ。そして1972年5月15日、ついに沖縄も27年間の悲願であった本土復帰を果たすことになる。

二島の友好を示す二羽の鳥

 辺戸岬散策をすると、祖国復帰闘争碑とは別にもう一つ不思議なオブジェを目にする。鳥のような魚のような得体の知れない生き物の像だ。

 これは「パナウル像」と呼ばれ、与論島では広く知られている「パナウル王国」の国章に描かれる架空生物「カリユシ」である。海に囲まれた島であることにちなみ、上半身が鳥、下半身が魚という幸せを運ぶ生き物だそうだ。

パナウル像。この不思議な像には深い意味があった

 パナウル王国とは、1983年に与論町政施行20周年を記念して町内に建国された“パロディ国家”であり、パスポートも発行されている。「パナ」は花を、「ウル」はサンゴ礁を意味する。

 ともに日本復帰を願い戦ってきた国頭と与論を結ぶ絆の証として、幸せを運ぶパナウル像が与論から寄贈され辺戸岬に鎮座しているのだ。対する与論島には、国頭のアイコンであるヤンバルクイナ像が寄贈され与論の地から国頭を向いて建っている。

 沖縄が日本復帰して半世紀を迎える今年、今一度戦後沖縄の歴史を振り返り、史跡を訪ね歩き、これからの沖縄を皆で考えていこうではないか。

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