農業のIT化で新たな沖縄の可能性を切り拓く「Speedy farm」の挑戦

 

 さらに農業のIT化・DX化という視点で世界に目を向ければ、例えばイスラエルでは降雨が少ない土地でもデータ管理やロボティクスによる灌水制御などを用いて、多くの農作物を安定的に収穫する手法を実践しており“砂漠の農業立国”とも言われている。

農業のDX化を進められればシンプルに生産者の収入も増えるし、モチベーションにもつながる。こうした動きを迅速化していかないと、未来が明るいとは言えないでしょう

「絶対に止めないから失敗しない」

 そもそも福田さんはなぜ南城市に着目したのか。2020年にコロナ禍で沖縄に“避難”した際、たまたま訪れたのがきっかけだったという。

「その時に地元農家の野菜を取り扱っている『軽便駅かりゆし市』で衝撃を受けたんですよ。冷蔵庫もなくて、ワゴンに無造作に農作物がずらっと並んでいて(笑)。

 作物の収穫時期に応じて、たくさん並んでいる時も全然無い時もある。でも、それが本来の姿なんだと気付かされました。都会のように24時間365日、同じ野菜が並んでいるのは確かに便利で良いんですが、しかし無い時には無いというのが普通なんでしょうね」

 加えて、沖縄で農業をやろうとする人たちは他にもいたが、そういった人たちは石垣や宮古などの離島地域に目をつけており、本島南部は工作放棄地が多く地代が安い“穴場”だった。

 ただ、事業開始当初は農地を借りることは簡単な話ではなかった。放棄地とはいえ農業をした実績がなく、ましてや県外の“よそ者”ともなると地域行政から借地の許可を得るハードルは高くなってしまうのが実情だった。実際、福田さんへの対応はにべも無かったという。

はっきりと『よそ者には貸さない』という雰囲気がありましたし、手続きも不必要に煩雑な部分も多かったです。でも、そんな状況ではいつまで経っても放棄地はなくならないし、目の前にある可能性を無駄にすることになる。

 沖縄での農業をすることで新しい循環の仕組みを作りたいという構想を実現したいし、その先に沖縄の活性化もあると考えています。僕は何かを始めたら絶対に止めないから失敗しません。それと、長く滞在することとしつこく訪れるのは得意なんです(笑)」

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